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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=96

2024年12月10日

 運平が病臥していた間にも、墓標は増え続けていた。
 藤本テル(十六才)。前甲ミツエ(八才)。沖田セツエ(五才)。浜崎直記(二十才)……。
 直記はいま墓地に佇んでいる俊三の義弟だった。モジの弟である。俊三は妻と彼女の弟の三人でブラジルに来たのだった。俊三だけが辛うじて生き残った。
 先発隊員の一人で、平野川の上に小屋を建てて陽気な文野勝馬の父の馬太郎も死んだ。勝馬も独りぼっちになった。
 上本政一少年も、先月に母のスエを、今月になって父己之吉と妹シズエを失ってやはり独りぽっちになった。
 一家の中で十七才の生命力だけがマラリヤとの闘いにどうやら堪えられた...

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