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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=97

2024年12月11日

 第七章

 六月がきて、冬になった。
 移民たちがブラジルに着いてすぐ珈琲もぎに狩りだされ、早朝の寒さに震え上がって指に息を吐きかけた、あの深く印象に残っている季節だった。
 六月は聖人たちの月でもある。十三日の聖アントニオから、聖ジョアン(ヨハネ)、聖ペードロと収穫祭が続くのだった
 毎日、毎日、雲一つない青空が森の上にあった。日中かなり温度が昇るが、陽が西に傾くと共に地上の温度は一斉に空に昇っていった。冷たい夜気の中で、星は氷のようにきらめいた。
 オリオンが頭上に重石のようにのしかかり、サソリ座の赤い星が血走った目のように睨んでいる。あまりに星たちの...

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