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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=105

2025年1月9日

 何気なく足許をみると、脱ぎ捨ててある下駄に数匹のバッタがたがっていた。身をかがめて下駄を手にとってみると脂がついた鼻緒が喰い千切られていた。
 「クソッ!」
 彼は癇癪を起こして、土間のバッタ目掛けて下駄を投げつけた。
 夕方が近ずくとバッタはパラパラと飛び上り近くの森にとまった。地上では寝ないようだった。凄いバッタの群で、森は茶褐色の厚い甲冑をまとったように見えた。
 頭をめぐらすと周囲の森はギッシリとバッタで盛り上がっていた。バッタが動くのか、森は夕日を受けてキラリキラリと赤い金属的な光を不気味に反射するのだった。
 完全にバッタの群に包囲された状況...

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