日本発の環境型農業=注目の「ヤマカワプログラム」(4)=「一番弟子」船戸知樹さん

船戸知樹さん(52歳、北海道常呂郡佐呂間町)は、同農法考案者である山川良一さんから特に信頼を置かれた「一番弟子」だという。
船戸さんは北海道最北端に位置する北海道オホーツク総合振興局管内の常呂郡佐呂間町出身だ。北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパスを卒業し、学生時代は農業技術を学びながら野球に励んだ。
卒業後は、北海道農業改良普及センターで技術者として農家に肥料や農薬などの技術指導をしてきた。
船戸さんと山川さんの出会いは、山川さんからの一本の抗議電話だった。
「2011年の時でした。急に職場に電話がきて、『なんでこんな農業をやらせているのか説明しろ!!』と馬鈴薯(じゃがいも)のそうか病対策が間違っていると抗議してきたのです。こちらは教科書通り、農業の世界での一般常識を回答したのですが、どうも話が嚙み合わなくて驚きました」と語り、続けて「でも山川先生の自然の摂理についてなどを聞くと『そういうことだったのか!』と納得しました。思えば、20年間自然や微生物のことを考えずに様々な農法、農薬や品種、肥料を農家への指導として試していましたが、どこかで行き詰まっていたので、納得した時には目から鱗でした。そこから3年間山川先生の弟子になりました」と述べる。
船戸さんは、2011年から3年間弟子として毎週土日、山川さんと共に色々な畑を回り、自然とは何か、作物や微生物、環境とは何かなど教えてもらったという。
船戸さんは、その後地元北見市にあるJA(農業協同組合)オホーツク農業協同組合連合会に転職し、現在は同連合会の農業振興部で地元の農家を支えている。
船戸さんは今回初のブラジルで、その印象について聞くと「街が発展していてどこか日本と変わらないように感じます。あと皆さん感情を出してくれるのでわかりやすいのでいいですね」と語る。
また、日系社会については、「第一回芥川賞受賞作『蒼茫』をこの訪伯前に再度読みましたが、あの状況に比べたら自分は恵まれていることを感じました。そして、今回の視察で関わった日系人の方を通して、先人の苦労がひしひしと伝わってきます。先人の苦労があって今のブラジル日系社会があるとおもいます」と述べた。(続く、淀貴彦記者)