ブラジル/米国外交危機=副大統領が米商務長官と会談=トランプ関税で直接交渉へ=米国務長官はブラジル外相を無視

【既報関連】トランプ米大統領が次々と関税を引き上げている件で、ブラジルのアルキミン副大統領兼商工開発サービス相が6日にハワード・ラトニック米商務長官と直接会談を行うことになったと5日付CNNブラジルなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
アルキミン副大統領とラトニック米商務長官との会談は当初、2月28日に予定されていたが、6日の17時30分からに変更された。
米国はブラジル第2の貿易相手国で、米国側の関税引き上げはブラジル産品の輸出だけでなく、国内産業の活動全体にも影響を及ぼす出来事だ。このため、トランプ大統領が関税引き上げを具体的に発表し始めて以来、ブラジルは慎重な姿勢を崩さず、最善の解決策を模索している。
副大統領は既に、米当局との対話を重ね、関税引き上げ措置の見直しなどを勝ち取りたいとの意向を表明しており、国内の関連部門との協議を重ね、全国工業連合(CNI)との解決策のすり合わせも進めている。
米国側が関税引き上げの対象として具体的な名前を挙げているのは、3月12日からとアナウンスされている鉄鋼やアルミニウムだが、トランプ氏が相互関税という表現を使っていることから、4月以降、両国の関税率に差があるエタノールや木材なども関税が引き上げられる可能性がある。
主な項目を見てみると、最初に挙がるのは、石油に次ぐ米国への輸出商品で、3月12日からは関税が25%に引き上げられる鉄鋼とアルミニウムだ。これらの項目については、第1期トランプ政権の時同様、コッタと呼ばれる割当枠を獲得することで、関税引き上げの影響を最小限に抑えられるのではないかと考えられている。
鉄鋼やアルミニウムに次いで関心度が高いのはエタノールだ。米国はブラジル産エタノールに2・5%の関税をかけているが、ブラジルは米国産エタノールに18%の関税をかけているため、ブラジル側が関税率を引き下げることを求められる可能性もある。
ただ、両国産のエタノールは原材料が異なる上、米国産エタノールは米国政府の補助を受けているが、ブラジルでのエタノール生産はより非効率な上、ブラジル国内でも貧しい地域で多くの人を雇用しているという違いがあるため、米国産への関税引き下げは容易には行えない。
また、トランプ政権が既に25%の関税を課すと発表している農産物に含まれる木材も、関心度が高い。これは、ブラジル産の木材の42・2%が米国に輸出されているためだ。
もちろん、米国による関税引き上げとそれに対する報復措置で中国や欧州との関係が強化された場合、鶏肉や大豆などの当該地域への輸出が増える可能性もある。ブラジル側はこれらの項目についても米国との対話を重視し、関税引き上げの影響を最小化すると共に、輸出時の安全性確保や国内での雇用や所得の維持・創出を図る意向だ。
なお、6日付CNNブラジルによると、マルコ・ルビオ米国務長官はトランプ政権発足後の45日間で58カ国の外相や代表者と直接または電話で会談を行ったが、ブラジルのマウロ・ヴィエイラ外相はまだ会談の機会を持てずにいるという。ヴィエイラ外相は1月に文書を送って早期の会談実現を願ったが、会談は実現していない上、トランプ氏は頻繁にブラジルの名前を挙げて関税率の違いなどを批判している。
これは、米国務省が純粋に商業的な問題以外の問題の論争の中心にいるためと見られている。論争の一つは米国に拠点を置く企業への営業停止措置や罰金に関する問題で、「米国在住の個人に対する検閲を拒否したとして情報へのアクセスを遮断し、罰金を科すことは表現の自由を含む民主主義の価値観に反すること」という声明を出したⅩや、アレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事を訴えたランブルはその一例だ。ブラジル外務省は、Ⅹやランブルへの営業停止や罰金措置などはブラジルの憲法や法令に沿った判断とし、司法当局の判断を政治的な道具として使うことを断固として拒否する姿勢を示している。(5)