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ルーラ政権=25年に9回の方針撤回=統制の欠如が浮き彫りに

2025年3月11日

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領(Foto: Jose Cruz/Agência Brasil)
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領(Foto: Jose Cruz/Agência Brasil)

 ルーラ政権は今年に入ってからの2カ月余りで、既に9回にわたり、発表済みの施策を撤回した。広報戦略の見直しで大統領や閣僚の発言が増えた一方、失言や政権支持率の低迷により、国民の反発を避けるための方針転換が相次いでいる。9日付ポデール360(1)が報じた。
 最初の撤回は1月15日、シドニオ・パルメイラ氏が大統領府社会通信局(Secom)長官に就任した翌日に発生。新たな広報部門の方針として、政府の施策を国民に広く周知するため、大統領および閣僚が積極的に発言するよう指示が出されていた。だが、メディアに露出する機会の増加に伴い、大統領の失言も増え、物議を醸す発言が2カ月間で20回以上も起きた。加えて、年初の政権支持率の低迷もあり、ルーラ政権は国民の反発を避けるため、既に決定済みの施策の見直しや撤回を余儀なくされている。
 主要な方針転換事例として、ルーラ大統領は24年10月8日、持続可能なエネルギーの利用を促進するため、ガソリンやディーゼル燃料にバイオ燃料の混合比率を引き上げる「未来の燃料法」を裁可。同法では、バイオディーゼルの混合比率を25年3月に1%ポイント(PP)引き上げることを定めていたが、実施時期が迫ると、連邦政府は食料品価格の上昇を抑制する目的で同措置を凍結すると発表した。
 また、フェルナンド・ハダジ財相の主導で進められていたデジタル決済システム「Pix」の監視強化策は、大統領府の判断で撤回された。この規制では、個人の場合は月間5千レアル以上、法人においては月間15千レアル以上の取引を対象に、税務当局が厳格に監視することが定められていたが、これが「金融取引に対する課税」であるとの誤解がSNS上で広まり、国民の強い反発を受けたため、政府が撤回を余儀なくされた。この件に関しては、商業界が取引監視に対する不信感から、取引にかかる追加費用を消費者に転嫁する可能性を懸念していたことが背景にあるとされている。
 さらに、食料品価格をめぐっても、政府は少なくとも2度方針を撤回している。一つ目は、鶏卵に対して賞味期限表示の義務化を発表したが、その後10日足らずで政府はそれを撤回。二つ目は、財相が1月に「食料品の価格引き下げに伴う財政的コストは発生しない」と断言したにも関わらず、3月にはジェラルド・アルキミン副大統領兼商工開発相が9種類の食品の輸入関税をゼロ化すると発表。財相は財政への影響は限定的と主張するが、何らかの財政負担が生じることは避けられないとみられる。
 ルーラ政権は、経済・財政の観点から適切と考えられる施策を打ち出しているものの、政権のイメージ悪化につながると判断されれば即座に方針転換を行う傾向がある。Pix監視強化策の一件を受け、大統領は「今後、閣僚が勝手に規制を発表し、我々に混乱を招くことがないよう、すべての規則は大統領府と内閣官房を通すことを義務づける」と指示を出した。だが、官房長官であるルイ・コスタ氏自身が「食料品価格への政府介入」を示唆する発言を行い、大統領府が数時間後にこれを修正する事態が発生。実際には大統領の指示が徹底されていないことが明らかになった。
 25年に入ってからの一連の撤回劇は、ルーラ政権の統治能力や意思決定プロセスにおける混乱ぶりを浮き彫りにしている。 


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