クーデター疑惑審理=最高裁全判事が参加に=前大統領側請求を却下=「直接証拠ない」反論も

【既報関連】連邦警察のクーデター捜査に関する審理で、ボルソナロ前大統領らの弁護士が求めた特定の判事を審理から外すか否かに関する最高裁の判事投票は弁護側の主張を却下する結果となったが、ボルソナロ氏の指名で判事になったアンドレ・メンドンサ判事がアレッシャンドレ・モラエス判事とフラヴィオ・ジノ判事の参加を差し止めるに票を投じ、注目された。ボルソナロ氏自身も最高裁の決定に強く抗議している。
19~20日に行われた最高裁の審理で、モラエス、ジノ、クリスチアーノ・ザニンの3判事のクーデター計画疑惑の審理への参加に関する判事投票の結果が出揃った。
この投票は、当の本人は投票できない条件となっているので、11人中10人の投票で満場一致ということになるが、ルーラ大統領の元顧問弁護士だったザニン判事に関しては10人の判事全てが「審理に参加可能」との判断を行った。
だが、モラエス、ジノ両判事に関しては9対1と、満場一致にはならなかった。双方共に、メンドンサ判事が「参加できない」に票を投じたためだ。(1)
メンドンサ判事はこの投票に関して説明しており、モラエス判事の場合は「投獄、あるいは殺害計画の標的にされた被害者であり、直接的な関心を持つ可能性がある。これは刑事訴訟法第252条にも記されていることだ」として、ボルソナロ氏の大統領副候補だったヴァルテル・ブラガ・ネット氏の弁護人の主張を認めた。
また、ジノ判事に関しては、「最高裁判事になる前にボルソナロ氏を相手取って訴訟を起こした過去がある」との判断を下した。ジノ判事は1月8日の三権中枢施設襲撃事件が起きた時のルーラ政権の法相であり、ボルソナロ氏が大統領の時も、マラニョン州知事として、たびたび衝突を繰り返していた。
メンドンサ判事はボルソナロ政権時代に連邦総弁護庁(AGU)長官や法相を歴任している。なお、ボルソナロ氏が大統領時代に指名したもう一人の最高裁判事であるカシオ・ヌーネス・マルケス判事は、いずれの判事の参加にも反対していない。(2)
これで最高裁でのクーデター疑惑の審理には全ての最高裁判事が参加できることになったが、今回の結果を受け、ボルソナロ氏弁護人のパウロ・クーニャ・ブエノ氏は20日、ブラジル弁護士会(OAB)にかけあい、クーデター疑惑に関するOABの見解を発表してほしいと申し込んだ。
ブエノ氏は「クーデター疑惑で起訴された34人の弁護人たちは、連邦警察が入手した証拠や検察庁が提出した起訴状の内容を見ることができずにいる。起訴状の内容は連警や連邦検察庁の選ばれた人たちしか見ることができていない」として、異議申し立てを行った。OABによると、ブラガ・ネット氏の弁護人も同様の申し立てを行ったという。
ボルソナロ氏は20日夜、ブエノ弁護士と長男フラヴィオ上議と共に、70歳の誕生日を祝うライブ放送を行った。ブエノ弁護士はそこで、連邦警察や検察庁のクーデター捜査の書類は「直接的な証拠がない」と批判。ボウソナロ氏は「下級聖職者のような下議からトラブルメーカーと批判され、大統領選挙では命まで狙われながらも大統領に選ばれたというのに」と自身の捜査に対する政治的迫害を訴えた。
ボルソナロ氏ら8人の容疑者に対する起訴状を受理するか否かの最高裁第1小法廷での審理は25~26日に行われることになっており、警備体制が強化されている。第1小法廷が起訴状を受理すれば、ボルソナロ氏たちは被告となる。(3)