米国に景気後退懸念高まる=ブラジル経済にも直撃するか

最近の米国株の下落や経済指標の悪化は米国経済の冷え込みを示唆しており、同国の景気後退リスクの高まりが懸念されている。米国が景気後退に陥った場合に、ブラジルの輸出、物価、企業活動などに与える影響について、19日付BBCニュース(1)が報じた。
トランプ米大統領は中国、カナダ、メキシコなどに対する関税を引き上げる一方で、国内でも公務員削減を進めるなどの政策を進め、米国経済の先行きに対する不確実性が増しているが、トランプ氏はそんな中、最近のインタビューで今年の景気後退の可能性を否定せず、「移行期間」にあると発言した。
現時点ではまだ、2四半期連続の国内総生産(GDP)減少という景気後退の定義には当てはまらないが、不透明な経済環境は投資に悪影響を与える可能性がある。関税引き上げは輸入品の価格上昇を招き、そのコストが消費者に転嫁されることで、インフレ圧力を高める可能性がある。
さらに、貿易摩擦が激化すれば、世界的な供給網にも影響を及ぼす可能性がある。米国経済の規模を考えれば、同国の景気後退が現実となれば、世界経済全体に波及し、ブラジルにも影響を与える。専門家によると、米国で景気後退が発生すれば、各国の中銀は金融政策のさらなる緩和、つまり利下げの可能性を模索することになるという。
経済協力開発機構(OECD)は、トランプ氏の政策を受け、世界の成長率見通しを引き下げた。17日発表の経済見通し報告書では、ブラジルの成長率予測は2025年が2・3%から2・1%に、26年は1・9%から1・4%に下方修正された。これは、金融引き締めの影響に加え、鉄鋼・アルミ輸出に対する米国の高関税が要因だ。米国の成長率見通しも25年は2・4%から2・2%に、26年は2・1%から1・6%に低下。また、同機関は世界的なインフレ上昇の可能性を警告し、ブラジルのインフレ率を25年に5・4%、26年に5・3%と予測した。
米国が景気後退に陥れば、ブラジル経済への影響は多方面に及ぶ可能性がある。最初に考えられるのは輸出の減少だ、米国はブラジルにとり、中国に次ぐ第二の輸出相手国であり、特に工業製品の主要な輸出先だ。24年のブラジルから米国への輸出額は過去最高の403億ドルに達したが、需要減少が貿易収支に影響を及ぼす可能性がある。
金融市場も影響を受ける。米国の株価下落はブラジルの株式市場にも波及し、最近のようにボベスパ指数が下落し、ドル高が進む可能性がある。また、コモディティ価格の下落が予想され、ブラジルの主要輸出品である一次産品にも影響が及ぶ可能性がある。
米国の需要動向はブラジルの物価にも影響を与えている。例えば、最近の卵の価格上昇は、米国での鳥インフルエンザによる生産減少と、それに伴うブラジルからの輸出増が要因の一つとされる。米国の景気後退により輸出が減れば、逆に国内市場に供給が戻る可能性もある。
また、ブラジル企業の中には米国市場に拠点を持つ企業もあり、影響を受ける可能性が高い。航空機メーカーのエンブラエルや鉄鋼大手のジェルダウ、さらには小売業企業も米国で事業を展開しており、景気後退が業績に影響を及ぼすことが考えられる。
さらに、米国の景気後退が中国経済に影響を与えれば、それがブラジルにも波及する可能性がある。中国はブラジル最大の貿易相手国であり、米中両国の成長鈍化はブラジルの輸出や経済成長にとって逆風となる。
米国の景気後退リスクは過去数年間、何度も指摘されてきたが、これまでは現実にはならなかった。直近の景気後退は2020年の新型コロナウイルス流行時だったが、政府による一連の緩和策により短期間で回復した。だが、今回の懸念は過去とは異なる。これまでは「インフレ高騰による消費減少」が景気後退の要因と考えられていたが、現在は「企業のコスト増や雇用削減」が焦点となっている。景気後退の有無が今後の世界経済に与える影響は大きく、引き続き注視する必要がある。