COP30=サイエンス誌=「開催国の模範ではない」=先住民族との対立表面化も

急ピッチで準備が進む「国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」に関して、国際的な科学雑誌『サイエンス』最新号に主催国としてのブラジルに対する、次のような厳しい批判が掲載された。(1)

国立アマゾン研究所(Inpa)のフィリピ・ファーンサイド氏とドイツのハンブルグ応用科学大学のヴァルテル・レアル・フィーリョ氏が、「環境気候変動省を除いた事実上全ての政府部門が温室効果ガス排出を増やす活動を推進」中で「開催国としての模範を示していない」と書いたのだ。
一例は運輸省のアマゾナス州マナウス~ロンドニア州ポルト・ヴェリョ間の国道319号線修復計画で、同道修復でアマゾンの熱帯雨林の広い地域が森林伐採業者の立ち入りに解放される可能性があることや、道路によって露出される地域には地球温暖化を不可逆なレベルまで推し進めるのに十分な量の炭素が含まれていることも警告。
また、農務省による牧草地を大豆農園に変えるための補助金も森林破壊を促進するという。大豆栽培用地の価格が上がると、牧場主が土地を農家に売った金でアマゾン周辺にある広くて安い土地を買うからだ。
アマゾン川河口のエネルギーの潜在力評価計画を含む、アマゾン熱帯雨林と沿岸地域に石油・ガス探査場を開設するという鉱山動力省の計画も、ブラジルが先進国の経済水準に達するまで油田探索を続けるのは「気候災害を招く方程式だ」と評価。国際エネルギー機関が21年に開拓済み油田での採掘制限に賛同し、新たな探査地点の開拓に反対した上、30年までに同種の活動を終わらせると提案したことも想起した。
また、24年のリオ・グランデ・ド・スル州での大水害などを例に、制御不能な気温上昇は壊滅的な影響を及ぼし、アマゾンの熱帯雨林を失うことにもなるため、気候変動への取り組みはCOP開催国であること以上に大切だとも強調した。
24年12月10日付エスタード紙(2)によると、同様の批判は、パラー州がベレン周辺の国道316号線の渋滞回避のために考えている、法定アマゾンの環境保護区を通るリベルダーデ大通り建設計画に対しても出ている。州政府は同大通り建設は持続可能性と近代性の一例として扱っているが、専門家や伝統的なコミュニティの関係者は環境面や社会面でのインパクトを懸念している。
また、同州では1月半ばから、伝統的なコミュニティでの教育活動を遠隔授業に置き換えるという州政府の方針に反対する先住民族が国道163号線を封鎖したり、州教育局を占拠したりする問題が継続。先住民族がアマゾン保護の鍵を握っていることは世界的に認められており、COP開催地での先住民族との対立という矛盾も取り沙汰されている。(3)