最高裁クーデター審理=ボルソナロら8人被告に=判事5人満場一致の決定=前大統領「政治的で早すぎる」

25日、最高裁第1小法廷で、22年大統領選後のクーデター計画疑惑に関与したとされる容疑者8人に対する起訴状を受理するか否かの審理が始まり、傍聴席には起訴対象者となったボルソナロ前大統領も現れた。初日は審理上の手続きや予備的問題の審理だけで終わり、起訴状受理に関する審理は26日に行われたが、ボルソナロ氏をはじめとする起訴対象者8人は全員、満場一致で被告となった。
今回の審理はクーデター疑惑の中でも最も中核とされた前政権関係者を中心とする8人だが、25日はボルソナロ氏自身も傍聴席に姿を現し、審理の進行を見守った。
ザニン判事による開廷宣言後の審理は、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事による報告書朗読で始まったが、同判事は、「共和国の体制は、国家の諜報機関の利用により、攻撃的な言論とネットによるヴァーチャルな攻撃によって侵害された。公的機関に対する監視活動が憲法上の権限の完全な行使を差し迫った危険にさらした」という連邦検察庁の報告書の一部を朗読し、「犯罪組織が選んだ標的が暴力的に無力化されなかったのは、クーデター命令に対する陸軍最高司令部の支持を得られなかったためだ」と付け加えた。
続いてパウロ・ゴネ検察庁長官が見解を読み上げ、「ルーラ氏の出馬が認められた2021年以降、最高裁の判決や選挙システムに不満を抱いていることを示す発言や演説が行われ始めた」との言葉でことの始まりを指摘。「世論調査でルーラ氏優位と報じられ始めてからは緊張がさらに顕著に高まった」「大統領選後には投票結果を無効にするための会議を軍司令官らと持った」とし、ボルソナロ氏が「被告の席にいることを求める」とするなど、起訴対象者全員が被告になることを求めた。(1)
ボルソナロ氏側はこの過程ですでに荒れ、傍聴席にいた弁護人の一人セバスチャン・コエーリョ氏がモラエス判事に罵声を浴びせて退場処分となり、逮捕された。(2)
それに続いて行われた弁護人による答弁では、ボルソナロ氏の弁護人セルソ・ヴィラルディ氏が、「1月8日襲撃事件が重要なのはわかるが、ボルソナロ氏は関係のないことだ。それどころか、政権移行も手伝った」と証言。さらに前大統領の側近だったマウロ・シジ氏の司法取引無効化を求めた。(3)
だが、シジ氏の証言の無効化や大法廷での審理など、弁護側が今回の審理で求めた要求はすべて却下された。大半は判事5人が満場一致で却下したが、唯一の例外は「第1小法廷ではな最高裁全体での審理を」との要求で、ルイス・フクス判事が賛同の意を示した。
起訴状受理そのものの審理は2日目の26日に行われた。まず報告官のモラエス判事が1月8日襲撃事件の映像を見せながら、「聖書を片手に抱えた高齢の女性たちが被告になっている、などというのは嘘だ。襲撃事件の被告の内、女性は32%で、70歳以上は7人のみだ」と説明。女性や高齢者を容赦なく被告にしているとの襲撃事件の恩赦擁護派の意見の矛盾を指摘した。
モラエス判事はさらに、「被告となるためにしかるべき理由がある」として、ボルソナロ氏はじめ8人の起訴対象者全員が被告となることを勧めた。
これに対し、フラヴィオ・ジノ、ルイス・フクス、カルメン・ルシア、クリスチアーノ・ザニンの4判事が賛同し、ボルソナロ氏ら8人は満場一致で被告となった。
26日、ボルソナロ氏は、被告になれば即座に電子足輪をはめられるという虚報に触れ、最高裁行きを断念。ブラジリアの自由党(PL)本部で審理の結果を聞いた。ボルソナロ氏は被告になったことに関して、「政治的だ。あまりにも早すぎる」と最高裁の決定を批判した。
ボルソナロ派のタルジシオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事はSNSに「ジャイル・メシアス・ボルソナロはブラジルの主要な政治指導者であり、今後もそうあり続ける。我々は、これが彼が直面する最初でも最後でもない試練であることを知っているが、真実が勝利し、彼の無実が証明されることも知っている。私は、ボルソナロが、彼の周囲の人々を常に動かしてきた勇気をもって、このプロセスを遂行すると確信している。私と、そしてあなたの味方である何百万人ものブラジル人を頼りにしてください」と投稿した。
被告となった8人については改めて、起訴状の内容そのものについて審理するための裁判が執り行われることになる。(4)