ルーラ訪日=日メルコスルEPA加速へ=ブラジル投資拡大を呼びかけ

【既報関連】国賓として訪日中のルーラ大統領は26日、石破茂首相や日本とブラジル両国の企業関係者らが参加した「日・ブラジルビジネスフォーラム」において、南米南部共同市場(メルコスル)と日本の経済連携協定(EPA)の早期締結を求めた。また、バイオ燃料分野での協力や、アマゾンの森林破壊防止に向けた国際的支援の必要性を強調。日本企業に対して、ブラジルへの投資拡大も呼びかけたと、26日付エスタード紙など(1)(2)(3)が報じた。
日・メルコスルEPAの早期締結は両国の経済界が求めているが、トランプ米大統領による関税強化策により、さらに加速する見込みだ。ルーラ大統領は、「保護主義ではなく、統合により多くの利益を得ることができる」と強調。これに対し、石破首相も同協定を重要視しており、本格的な交渉開始に向けて強く働きかけていくことを約束した。日本経団連は、日本とメルコスルは「相互補完的な関係にあり、戦略的に重要な経済パートナーである」と述べており、自由貿易協定(FTA)よりも包括的な協定であるEPAの採択を求めている。
ルーラ大統領は同フォーラムの中で、様々な分野での二国間協力協定10件と、両国の企業、銀行、大学、機関の間でのパートナーシップ約80件に関する合意書に署名したと発表した。特に大きな成果の一つは、エンブラエル社の航空機15機を全日本空輸(ANA)に売却するとの合意だ。また、両国がバイオ燃料の生産で協力し、日本のガソリンへのバイオエタノール混合比率を2030年までに10%、2040年までに20%に引き上げるというエネルギー戦略計画をブラジルが支援することでも一致。ルーラ大統領は、「脱炭素化は選択ではなく、必要不可欠な課題であり、好機でもある。我々は公正な移行を主導し続ける」と強調した。
ルーラ大統領は11月にベレン市で開催される国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)についても、「これまでで最も重要なCOPを、責任を持って、冷静かつ真剣に開催する」と意欲を見せた。これに対して、石破首相も、ブラジルが気候変動対策の信頼できるパートナーであることを強調し、「ブラジルの優れたバイオ燃料技術と、日本の高性能モビリティ技術は、カーボンニュートラル実現の鍵となる」と述べた。
ルーラ大統領は、トランプ大統領の名を挙げることなく、京都議定書やパリ協定などの気候変動対策の国際的な合意を疑問視する指導者たちを批判し、さらに「先進国は約束通りの支援を実行していない」と指摘。アマゾンの森林破壊を2030年までにゼロにすることを誓い、その実現のためには国際的な支援が不可欠であることを強調した。
また、関税戦争や軍事衝突により、不確実性が世界的に高まる中、ルーラ大統領はブラジルを日本企業にとって「安全な投資先」としてアピールした。これは、ブラジルでの税制改革承認などの進展により、プロセスの簡素化、コスト削減、ビジネスの予測可能性の向上が期待されるためだという。「ブラジルは1908年に日本人にとっての安住の地となった。2025年もそうありたい。我々は、日本のパートナーシップ、ジョイントベンチャー、投資を歓迎する」と述べた。