米国がブラジル貿易障害批判=保護主義的、7番目に酷い

トランプ米政権による「相互関税」の詳細発表を2日後に控えた3月31日、米通商代表部(USTR)が2025年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表した。同書ではブラジルの貿易政策は保護主義的で米国に不利益をもたらすと批判し、八つの主要な貿易障壁を指摘したと同日付CNNブラジル(1)が報じた。米国政府は同書を基に、他国に対して高関税を課す正当性を主張する意図がある。
NTEは米国の輸出業者が直面する貿易障壁を詳細に記録し、USTRの取り組みを示すもので、全397頁のうち、ブラジルに関する記述は7番目に多い約5頁となっており、日本と同じ頁数だ。1番は中国で48頁、2番目はEUで34頁、3番目はインドで16頁。
貿易障壁の深刻さを表す金額ランキングでもブラジルは7位(80億米ドル)。日本は6位(100億ドル)。1位はやはり中国(500億ドル)、2位はEU(320億ドル)、3位はインド(250億ドル)となっている。米国はこの貿易障壁の大きさに応じて、相互関税や高関税の脅しをかけながら規制緩和を求める交渉を行うようだ。
米国が懸念するブラジルの貿易政策には、両国が2011年に締結した貿易円滑化協定(ATEC)が含まれている。同協定は2022年に透明性や貿易円滑化を強化する形で更新されたが、ブラジルはメルコスルの共通関税法を未批准のままで、履行の遅れが指摘されている。
関税政策においては、ブラジルの平均関税率が11・2%と高く、自動車、電子機器、化学品などの分野に影響を及ぼしている。2024年からは米国産エタノールに18%の関税が課され、米国からの輸出が減少。また、工業製品税(IPI)は同種商品でも国内外で異なる税率を適用しており、ブラジル産のカシャッサへの課税率は16・25%なのに輸入酒類には19・5%を課すなど、米国産品が不利な状況にある。
また、ブラジルは中古の重機、電子機器、医療機器、自動車などの輸入を禁止し、靴や衣類、自動車の輸入には不透明な非自動ライセンスを要求。さらに、通関手続きの要件が一貫せず、輸出業者に負担を強いている。
技術・衛生規制面では、国家バイオ燃料政策(RenovaBio)により、外国企業がカーボンクレジット市場から排除され、米国産豚肉の輸入も科学的根拠が不十分なまま禁止されている。ワインの輸入には国内検査機関での二重認証が求められ、貿易の障害となっている。
政府調達では医療や防衛分野で国内企業が優遇され、大規模契約には技術移転や現地生産義務が課されている。2023年には世界貿易機関(WTO)の政府調達協定(GPA)交渉から撤退し、政府調達市場の開放に消極的な姿勢を示した。知的財産権の保護も不十分で、サンパウロ市の「3月25日街」では偽造品が流通。特許審査が遅く、医薬品分野では特許取得に最大9年を要するほか、臨床試験データの保護も不十分とされる。
一方、セルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問はヴァロール紙の取材で、トランプ氏による関税措置に対しては交渉を重視し、ブラジル経済に悪影響を及ぼす可能性のある分野で報復措置を取ることはないと協調。また、交渉が失敗した場合に限り、報復措置を取る意向であると述べた。同氏は、ブラジルが米国との綿花問題で知的財産権を巡る訴訟に取り組んだ事例を引き合いに出し、今回も同様に経済にマイナスの影響を与えない分野での対抗措置を選ぶ方針を示した。
また、トランプ氏の商業政策はブラジルやコロンビアを中国の影響圏に引き寄せる可能性があり、米国、ロシア、中国が世界を三分しようとしているとの懸念を表明。加えて、欧州が国際舞台で影響力を失いつつある中、メルコスルと欧州連合(EU)との自由貿易協定は、両国にとり、ますます重要な役割を果たすだろうと述べた。(2)