上院=対抗関税法案を承認=トランプ関税対策で=今週中に下院も審議

上院本会議は1日、米国のトランプ政権が2日から国際的に行う高率関税(ポルトガル語でタリファッソ)に先駆け、ブラジル製品に貿易障壁を課す国や地域に対して連邦政府が対抗関税を賦課する仕組みを作り、それを認める法案「projeto de reciprocidade econômica(経済互恵プロジェクト)」を全会一致で承認した。ルーラ大統領もこの日は会議を行い、タリファッソに構える意向を示している。同日付CNNブラジル(1)が報じている。
トランプ米大統領は2日、貿易関税パッケージとして、ブラジル製品に10%の追加課税を課すと発表した。これはシンガポールや英国などと同率で、追加税率の中で最も低い。ブラデスコ銀行の計算では、ブラジルの輸出に20億ドル規模の影響を与えるという。
これに備えて、ブラジル上院経済問題委員会(CAE)で1日、対抗関税を可能にする法案が最終承認されていた。上院議員たちは、採決を早めるため、この法案を本会議に提出するという両院政府リーダーのランドルフ・ロドリゲス上議の緊急要請も承認した。
承認された法案の主旨は、「ある国や地域がブラジル製品に貿易上の障壁となる高率関税をかけた場合は、その国や地域に対抗的な関税をかけることを認める」というものだ。この措置は特に、農業生産品を念頭に置いたものだという。
この法案は完結された形で承認されたため、他の委員会は経ず、上院の本会議にかけられた。この法案は事前に連邦政府も野党側も賛同も得ており、とりわけ農業部門から強い支持を受けている。
CAE委員長のレナン・カリェイロス上議(民主運動・MDB)は審議後にウゴ・モッタ下院議長(共和者・RP)に掛け合い、下院でも今週中に投票を行って欲しいと語った。
今回の法案は2023年4月に提出された法案を基にしたもので、トランプ大統領が鉄鋼製品やアルミに25%の課税を行うと宣言したことで、審議を求める声が急速に強まっていた。
法案の報告官は元農相のテレーザ・クリスチーナ上議(進歩党・PP)が務めた。それによると、高い関税を課す国や地域が「ブラジルの主権的選択を脅かす場合」「ブラジルとの商業的な協約を侵害する場合」「相互公平(バイラテラル)の貿易原則を破って一方的な貿易(ウニラテラル)な行為を行ってきた場合」、貿易協議所(Camex)が報復的な高税率を課しても良いとしている。Camexがそれを行う際は、相手国が行った行為で伯国が受ける損害に相当するだけの税率を認めるとしている。
ルーラ大統領も外遊から帰国した直後からタリファッソ対策に乗り出し、連邦議会の政党リーダーたちとの会合に動いている。予定では2日に上院、3日に下院の政党リーダーたちと会合を行う。(2)
ルーラ大統領は先週行ったアジア外交にモッタ下院議長、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長(ウニオン)を帯同させており、そこで得た良好な関係を政党リーダーたちにもつなげたいとしている。これらの会議には政局調整(アルチクラソン)担当のグレイシ・ホフマン大統領府渉外室長官も参加する見込みだ。
だが、タリファッソを迎えるブラジルの経済や貿易関係者の間では悲観的なムードが広がっている。米国側との交渉もままならず、2日からは鉄鋼製品やアルミに対し、25%の課税が始まっている。ブラジルは2024年に、メキシコ、カナダについで世界第3位となる26億6千万ドルの鉄鋼製品を米国に輸出していた。
トランプ大統領は自動車や自動車部品に対するタリファッソも示唆しているが、ブラジルは昨年、米国に13億ドル相当の自動車部品を輸出している。(3)