トランプ関税=中国製品の氾濫がブラジルに?!=元切下げで輸出拡大も=「貿易戦争に勝者なし」

米中が関税の報復合戦を繰り広げている。今後、中国が元切下げなどの対抗策を図ることにより、そこからはじき出された安価な中国製品がブラジルなどにも大量に流れ込むのではと国内産業界に不安が高まっていると9日付G1(1)などが報じた。
米中が関税の報復合戦を繰り広げている。2日にトランプ大統領が中国製品への34%の追加関税を発表して、課税率を54%に引き上げた。中国は報復として米国製品に34%の関税を課した後、ホワイトハウスは中国輸入品にさらに50%の関税を課すと発表、中国製品の関税は104%に。それに対して中国が北米製品への関税を84%に引き上げたことを受けて、米国は中国への関税を125%に再度引き上げた。
この米中対立に伴い、トランプ大統領は他国に対して行っていた相互関税を90日間差し止めると発表した。
これを受け、9日の市場は大きく動いた。ブラジルではドルが2・52%下がって5・844レアルまで落ちた。この日の午前中はドルが上昇し、1ドル6・096レアルまで上がっていたが、相互関税の差し止め発表後は大きく下がった。
また、サンパウロ平均株価指数(Ibovespa)は3・11%上昇し、12万7795ポイントに上がっている。
米国ではS&P500が9・51%、ナスダックが12・16%、ダウが7・87%上昇し、2008年以来で最良の日になったと発表された。(2)
さらに、相互関税で高い税率をかけられていたアジア諸国にとっても、株価の上昇が相次いだ。
この状況に対し、ルーラ大統領は9日、苦言を呈した。大統領はこの日、ホンジュラスでのラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の会議に参加していたが、この席で「恣意的な関税は国際経済を不安定にし、物価を上昇させる。貿易戦争に勝者はいないことを歴史は教えている」と語っている。(3)
また、元中銀総裁で元財相のエンリケ・メイレレス氏は「中国の第一目標は輸出、次に国内消費だ。輸出に障害が起きれば中国は常に自国通貨を切り下げ、むしろ輸出拡大を図ってきた。その結果、他国通貨建ての物価は下落している」と分析する。
トランプ大統領は2019年にも全ての中国製品に10%の関税をかけたが、その時も国際市場における中国製品の競争力を上げる結果につながっている。
メイレレス氏と同じことはブラジルの産業界も予測している。中国製品は露天商や中国系のオンンライン・サイトを通じて入ってきている上、工業製品も輸出されてきているが、その流れが今回の米国の措置で強まるとみられている。(4)
アルコ・インターナショナルCEOのチアゴ・アラゴン氏は、「ブラジルは中国によるダンピング(採算無視の商品安売り)の重要な輸出先として更に重要になる。これは既に起こっており、今後さらに増加する傾向にある。中国での生産コストははるかに低く、政府補助金も非常に高額なので、中国との競争は非常に困難だ。これは消費者にとっては素晴らしいが、ブラジル産業にとっては大問題となる」とし、米国からはじかれた中国製品の氾濫が今後伯国で起こる可能性があると警鐘を鳴らした。(5)