site.title

BRICS外相会合=トランプ批判は見送り=多国間主義擁護で一致

2025年4月30日

マウロ・ヴィエイラ・ブラジル外相(Foto: Fernando Frazão/Agência Brasil)
マウロ・ヴィエイラ・ブラジル外相(Foto: Fernando Frazão/Agência Brasil)

 ブラジル、ロシア、中国などBRICS加盟国の外相らは28〜29日、7月にリオ市で開催されるBRICS首脳会議に向けた準備会合を開き、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争に対抗する方策などについて協議した。同会議では多国間貿易体制の重要性を再確認し、一方的な保護主義的措置や無差別な関税引き上げへの批判を盛り込んだ共同声明が発表されるとの予想も高まっていたが、最終的には合意には至らなかったと、29日付ヴァロール紙など(1)(2)(3)が報じた。
 リオ市旧外務省本部での会合は、米国による新たな関税の影響で国際通貨基金(IMF)が世界経済の成長見通しを下方修正するという、極めて重要な局面での開催となった。ブラジルは今年1月からBRICS議長国を務めている。
 フォーリャ紙が入手した国際貿易に関する草案によれば、各国外相はトランプ氏への直接的な言及を避けつつも、世界経済の分断化と多国間主義の弱体化に深い懸念を示していた。(4)草案では世界貿易機関(WTO)を多国間ルールを定める唯一の正統な機関と位置づけ、同機関を中心とする国際貿易体制への支持が明記されていた。また、「根拠なき一方的な保護主義措置の増加、WTO規則に反する無差別な関税引き上げ、環境政策を名目とする非関税障壁の乱用が供給網を不安定化させ、経済的不確実性を高める」との指摘も盛り込まれていた。さらに、自由貿易と多国間体制の擁護を各国に求めると共に、新興国・途上国を含む全ての国にとって、貿易および投資に適した環境の整備を呼びかける内容が含まれていたが、草案は最終的に合意には至らなかった。
 BRICSの一員である中国は関税措置の最大の標的で、トランプ氏は中国製品に対して最大145%の関税を課す措置を講じた。これに対し、中国は米国製品に対して125%の関税で報復。米国側の一方的な措置と圧力に対し、「歴史の正しい側に立つ」と強調している。
 28日の開会式では、ブラジルのマウロ・ヴィエイラ外相が、人道危機や紛争、政治的不安定、多国間主義の後退といった国際情勢を踏まえ、対話の重要性を訴えると共に、「BRICSの役割はかつてなく重要だ」と語った。また、イスラエル軍のガザ地区からの「完全撤退」を求め、50日以上続く人道支援封鎖は「容認できない」と厳しく非難した。
 BRICSはウクライナ戦争に対してはより慎重な姿勢を取っており、ロシアの侵攻を明確に非難することはせず、平和の必要性を主張。ヴィエイラ氏は国連憲章の原則に基づく外交的解決の重要性を改めて強調した。
 また、ドル依存からの脱却も議題に上がった。検討されている選択肢の一つはブロックチェーン技術を活用した代替決済システム「BRICS Pay」導入だ。同システムは支払いを簡素化するだけでなく、加盟国間での自国通貨による取引を可能にする。この提案は、トランプ大統領がかつて批判したBRICS共通通貨の創設とは異なるものである。
 また、11月にパラー州ベレンで開催される国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)を前に、気候変動対策のための資金調達問題も議論の対象となった。提案の一つとして、低炭素経済促進を目的とする「熱帯林の永遠基金(TFFF)」創設が挙げられ、温室効果ガス排出期間が新興国や開発途上国に比べて圧倒的に長い先進国には、基金の維持のためにより多くの資源投資が求められている。
 ブラジルのマウリシオ・リリオ大使は同会合前の26日、エネルギー転換に関して、「一部の国が正式に資金を拠出し、他国は任意で貢献する」という現在のモデルの見直しは議題に上っていないと述べた。その上で、こうした区別は極めて重要であり、歴史的に最も多くの汚染物質を排出してきた先進国(富裕国)が気候変動対策の財政的責任を負うことを定めたパリ協定の原則に基づき、ブラジルは新興国との連帯を示していると強調した。(5)


予防接種=米州大陸で麻疹の接種=黄熱病患者はブラジルに集中前の記事 予防接種=米州大陸で麻疹の接種=黄熱病患者はブラジルに集中政府入札=大規模な劣化牧野回復に=10年間で4千万ha農地へ次の記事政府入札=大規模な劣化牧野回復に=10年間で4千万ha農地へ
Loading...