《記者コラム》カタカナ表記に感じる違和感=耳で聞いてもわからない!?

「ながら族」という言葉がある。ラジオを聴きながら仕事をするとか、テレビを見ながら食事をするなど、片手間的な印象があり、学生時代は余り好きではなかった言葉だが、今は、テレビのニュースを流したまま仕事をしている自分がいる。
仕事をしながら、今、何が起きているかを知ることができるため、ニュース番組をつけっ放しにするようになって久しいが、休みの日も、家事をこなしながらテレビの音声だけ聞き、気になることがあった時は画面を見るというのが日常化してしまった。
そんな状態だと、聞いただけでは何のことだかわからず、画面を見て初めて納得ということも頻繁に起こる。NHKの番組でメキシコ料理のことを流していた時もその一例だ。
メキシコの人達の好物の一つは「カルネアサダ」だと話しているのだが、二つの言葉をあたかも一つのように話していた上、アクセントの位置が違っていたため、カタカナ表記されたスペイン語が、「カルネ・アッサーダ(焼いた牛肉)」だと、画面を見るまで気づかなかった。
だが、気になってネット検索してみても、カルネアサダは結構一般化しているらしく、カルネ・アサーダのように2語として表記している例は少数だった。
同じような例は、1月にNHKで流れたWEB特集「未知なる先住民 一挙出現の謎を追う」でもあった。「文明に接触したことがない未知の先住民」のことを「イゾラド」と繰り返して言うため、そんな名前の部族は知らないな~と思いつつ番組を見、やっと、「隔絶された」の意味の「イゾラード」(isolado)のことだと気がついた。
音声学的な発音記号で表さず、外国語をカタカナ表記し、日本語的に読むとこうなるのかと改めて実感した。NHKではその他にも、江戸~明治に残された英単語をカタカタで書き記そうとした例を読み上げ、元の単語を欧米人にあてさせるという番組を流しており、音の体系が異なる言語を日本語表記しようとすることの難しさを伝えていた。
印欧語族と呼ばれる言語とはまるっきり異なる日本語の特殊性や、英語やスペイン語、ポルトガル語といった外国語に初めて接した人達が感じた困難、移民としてブラジルに来た日本人が経験した壁の数々にも思いを馳せた時は、言葉の壁や文化の壁に苦しみながらもそれを乗り越えて生きてきた先人達の苦労や逞しさに圧倒された。
ネイティブの人は第2、第3言語として話している人が多少のミスを犯しても伝えようとしている内容をくみ取れることが多いから、コラム子が感じた程度の違和感は壁にならないのかも知れない。
だが、弊紙の読者がポ語しかわからない家族や知人と話す時の糸口になると良いな、ブラジルを知らない人にもブラジルを身近に感じてもらえると良いな、などと願いながらブラジルや南米の情報を伝えようとしている手前、こういった番組を見た人がスペイン語圏やポルトガル語圏の人と話そうとして、「テレビで見たんだけど」と切り出しても、話が通じなかったという結末になりそうな気がして残念でならない。発音により忠実なカタカナ表記を含め、その言語を話す人達との話の糸口になるような内容や伝え方という視点の必要も考えされられた経験だった。(み)
(1)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250108/k10014686881000.html