新型コロナ=サンパウロ市郊外は再感染率高い=所得やHDIと相関あり

アルベルト・アインシュタイン病院と全ての人々の健康研究所(ITpS)がオックスフォード大学が出版する科学雑誌『Clinical Infectious Diseases』に発表した論文により、新型コロナウイルス感染症(Covid19、以下新型コロナ)への再感染率は所得や人間開発指数(HDI)、スラム街(ファヴェーラ)の存在などと相関性があることが分かったと13日付G1サイト(1)が報じた。 「ブラジル・サンパウロ市におけるCovid19再感染:有病率と社会経済的要因」と題する論文は、新型コロナに複数回感染する可能性に関する初の追跡調査だ。
研究では、2020年2月~2023年12月に新型コロナに感染したことが確認された7万3741人の追跡調査を行った。再感染者の一人でサンパウロ市東部ジャルジン・ノルデステに住むラニエリ・ランゴン氏(34歳)は、新型コロナに4~5回感染。同氏は市立校教師で、パンデミック中に対面勤務を再開したグループに属している。
調査では、再感染率の高い地域は郊外に集中していることが判明。市街地の端にあり、極東部などと呼ばれる地域は、インフラ整備も不十分で、社会的に最も脆弱であることが確認された。他方、医療サービス網が充実し、社会指標も良好な市中心部は再感染率が最も低かった。
研究者達はラボラトリーで感染が確認された人のデータと私達のサンパウロという団体が作成した格差地図を重ね合わせることで、市東部では90日以内に再感染した人の割合が9・6%に達した一方、市中心部は6・4%で、社会経済的な差が再感染リスクを50%も高めることを証明した。全市の平均は7・6%、全てのデータを並べた時の中心値(中央値)は8・06%だったという。
研究では、最貧困層はより密集した住宅に居住する傾向があり、リモートワークの選択肢がないため、リスクにさらされる可能性が高いと考察。郊外に住む労働者は在宅勤務ができない業務に従事している人が多く、公共交通機関で長距離を移動しなければならなかったため、新型コロナの感染リスクにより多くさらされたというのだ。
前述のランゴン氏は勤務先の学校の近くに住んでいたが、生徒の中には両親がこのような状況下にある子供が多く、感染リスクが高い環境に置かれていた。また、同氏の母は看護婦、父は警備員、兄弟は兵士で、皆が対面勤務が必要な仕事に就いていたこともリスクを高めた。
また、より不安定な社会経済的状況下にある人々は、健康保険に未加入で、高額な医療費や交通手段の不便さ、医療の専門家へのアクセスの制限といった障害にも直面している。
これらの脆弱性要因はこの研究結果の根拠でもあり、疫学的な観点から見た時も、社会的不平等が人口に異なる影響を与えることを裏付けている。
現在は新型コロナで爆発的な流行が起きる可能性はほとんどなく、5月のサンパウロ市での新型コロナ感染者は723人、死者は5人だった。だが、この研究の結果は、新型コロナ同様に感染するインフルエンザなどの疾患に対しても警鐘を鳴らす。
インフルエンザ様の症状を呈す疾患(IS)や病名不明の重症急性呼吸器症候群(SARS、ポ語ではSRAG)の症例はサンパウロ市でも増加傾向にあり、5月だけで2万4800件を超えた。5月のSARSによる入院は2236件で、新型コロナによる入院は29件、インフルエンザによる入院は863件、他のウイルスによる入院は476件で、病名不明のSARSによる入院が560件、調査中も308件あった。
サンパウロ市保健局は社会的な不平等が公衆衛生に与える影響について訊かれ、資料を入手していないとしつつ、2016年は全市で三つだった救急診療所(UPA)が、郊外中心に増えて34になるなど、医療ネットワークの拡大に投資してきたと強調。呼吸器症状のある患者への初期対応はUPAや外来診療所(AMA)が行っている。
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