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顔認証利用拡大で懸念広がる=専門家「強制は違法」と警鐘

2025年7月31日

イメージ(画像出典:Freepik)
イメージ(画像出典:Freepik)

 ブラジルではすでに100万棟のマンションで入館管理システムとして顔認識が取り入れられている。利便性や安全性の向上を謳う一方で、過剰な個人情報収集やプライバシー侵害の懸念も生んでおり、専門家はこうした技術の「利用強制は認められない」と警鐘を鳴らすと29日付CBN(1)が実態と法的課題を報じた。

 日本では顔認証プラットフォームFreeiDを導入したマンションが133棟、5373戸(2024年10月末時点)。三菱地所レジデンスの賃貸ブランド「ザ・パークハビオ」では「ライナフGate」という顔認証システムを導入した事例があるが、大規模に全国展開して数値を公開しているという意味では前者が代表格のよう。ブラジルでは意外な先端技術が普及している。

 当地で顔認証導入が進むマンションでは事前に写真提供が求められるが、拒否することで出入りが制限され、引っ越しを余儀なくされた住民もいる。ミナス・ジェライス州のスカイ・レイテ・フェルナンデスさんはその一例。強盗事件をきっかけに顔認証が導入されたが、代替手段は提示されず、写真提供を拒んだ彼女は一時、自宅から出られない状態に置かれた。住み替えの猶予を求めたが受け入れられず、やむなく転居した。「顔がどう使われるかは自分で決めるべきだ」と憤る。

 専門家や裁判所は「入館時に顔認証を義務付けることは認められず、ICタグや本人確認書類による代替手段を設けるべきだ」と指摘するが、こうした見解は十分に浸透していない。

 デジタル権利保護を目的とする非営利機関「ITS―Rio」の法務・技術コーディネーター、ジョアン・ヴィクトル・アルシェガス氏は、「顔認証技術は安易に使われすぎている」と批判。一般データ保護法(LGPD)に基づき、生体情報は極めて機微な個人情報であり、本当に必要な場合のみに限って収集すべきだと強調する。

 LGPD(法令13709/2018号)は、例外を除き、個人データの処理には本人の明確な同意を求めており、「住民にデータ提供を強制することはできない」とする。

 顔認証導入は住宅だけでなく、オフィスビルや医療施設にも広がっている。アルシェガス氏は「免許証などの書類で本人確認が可能な場面にまで顔認証を使うべきではない」と批判している。

 サンパウロ州に住むある夫婦は、顔認証登録を拒否したことで医療施設への入館を断られ、治療を断念した。施設の管理者に代替手段を求めたが、回答は得られなかった。友人に会いに別の住宅ビルを訪れた際にも、顔認証を拒否したため入館できなかった。だが後から来た外国籍の訪問者が「CPF(納税者番号)がないため登録できない」と伝えると顔認証なしでの入館が認められ、不公平さを感じたという。

 企業はデータ収集にあたり、透明性・安全性・説明責任を果たし、保存期間や利用目的を明示する義務がある。LGPDに基づき、個人は収集データの閲覧や不要時の削除を請求できるが、実際には対応が不十分な事例も多いという。

 顔情報は銀行口座や政府のオンラインシステムなどでも使われており、パスワードと違って漏洩しても変更できない点でリスクが高い。データ管理は企業の重大な責任だが対応は不十分だ。

 アルシェガス氏は「顔情報がAIの学習に使われ、ディープフェイクなど詐欺に悪用される恐れがある」と警告。顔認証と監視カメラが連動すれば、個人の行動が追跡される可能性もあるとし、慎重な対応を求めている。

 実際、今年5月にはサンパウロ州ジュンジアイ市でマンション住民数百人分の顔写真や個人情報が闇サイトで売買されているとの匿名通報を警察が受けたが、立件には至らなかった。

 LGPDには本人の同意を不要とする例外があり、法令遵守を目的としたデータ処理もこれに含まれる。一般スポーツ法(法令14597/23号)では、収容人数2万人以上のスタジアムに顔認証による入場管理が義務付けられ、今年6月から正式に施行された。


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