帰化して三重知事選挙に挑戦=「日本の姿」問う石川剛さん(5)=日伯連携で切り拓く県の未来

石川さんのビジョンは県内にとどまらない。「知事に当選したらまずはサンパウロ州知事、リオグランデ・ド・スル州知事にお会いしたい」と、実のある関係構築を軸にブラジルとの経済連携を深化させる構想を描く。
特に、三重県にエンブラエルと共同のアジア拠点を設置する構想は、日本の航空技術とブラジルの生産力を融合させ、世界市場への共同進出を視野に入れたものである。
ほかにも、日本単独では利権争いに勝ちづらいアフリカ市場への進出についても、ポルトガル語諸国共同体の絆を活かしたブラジル経由の共同戦略を支持。日本とブラジルの政治家同士が真に理解し合う関係構築を目指し、活用しきっていないブラジルと世界の日系社会の潜在力を外交資源として最大化する構えだ。
食糧戦略のためには、ブラジル南部からの農畜産物を、貨物列車を連結した新幹線を敷設してサントス港に運び、そこから日本へ輸出する50年・100年単位のインフラ計画のアイデアもある。持続可能で互恵的な経済循環モデルを日伯で築くことが、次世代の繁栄の鍵と考える。
「正しい軌道」への決意と信念
「日本は〝正しい軌道〟に戻らなければならない」という石川さん。「どこの馬の骨か分からない」と言われながらも、前回の知事選で獲得した5万9571有効票と5万2000無効票(当日有権者数:147万3018人、最終投票率:37・93%)は、「本気で変えたい」という有権者の声の表れだった。今、その声に応える準備が石川さんにはあるという。
県民第一主義を掲げ、「県民の命を自分の命よりも重い」との信念を持ち、幼少期に父親から教えられた「男は自分の名前と誇りを守るもの」という言葉が、人生観の礎となっている。特に、女性や子ども、高齢者を守ることは男の義務であると受け継いだ教えは、日々の行動指針となっている。
好きな言葉には、彼の思考と未来への希望が色濃く表れている。
◎「戦うとは、憎しみのためではなく、守るべき者への愛ゆえに行うもの」
◎「決勝戦略とは現実を冷静に分析した結果である」
◎「命は永久ではない。だからこそ未来を築くのだ」
家庭では、妻と4人の子どもたちと過ごせる時が一番の幸せ。来日以来、家族も本人もブラジルに行ったことはないが、子どもたちはポルトガル語と英語でもコミュニケーションできる。「子どもたちが誇りに思える父親でありたい」という思いを胸に日夜過ごし、子どもたちも将来、日本で家業を継ぐことに前向きである。
尊敬する歴史上の人物は徳川家康。「いつか『三重県にこんな人がいたんだね』と言ってもらえるような存在になれたら」と笑顔で語る。
夢は次の世代が安心して平和に暮らせる社会をつくること。その想いが、地域の安全や家族の幸せを守るために、石川さんが日々力を尽くす原動力になっている。(取材=大浦智子、終)