東京農大=江口学長「この地踏めて嬉しい」=卒業生250人渡伯、強い絆実感=「世界に誇れる大学に」

「ブラジルには本学の卒業生が250人以上も移住しています。我が校の開学の祖榎本武揚が乗った開陽丸が、1867年にリオに寄港した縁もあります。コロナ真っ最中の2021年に学長を引き受けたため、来るのが遅くなりましたが、ようやくこの地を踏めて嬉しいです」と東京農業大学の江口文陽学長(60歳、群馬県出身)は8月25日、本紙編集部を訪問して笑顔を浮かべた。
「本学の学生は1万3千人、農学の総合大学として世界の食糧生産に関わる上で、農業大国ブラジルへいかに貢献できるかは、今も重要な課題です。ですから今回の訪問団は、本学の中核を担うメンバーが顔を揃えております」と意気込んだ。
林学博士の学歴を持つ江口学長は、森林科学ときのこ学を専門とし、長年にわたり木材の保存化学やきのこの機能性研究に取り組んできた。その関係で30年ほど前に姫マツタケ研究のために1週間ほど来伯したことがあり、今回2度目。
2016年に「食と農」の博物館長、2020年に森林総合科学科長を経て、2021年から学長および理事、さらに2023年には理事長も兼務、今年4月から学長2期目に突入するなど、大学運営の中枢を担っている人物だ。
初来伯という副学長で校友会常任理事の上岡美保さん(51歳、香川県)も、「移住された諸先輩方がいかにブラジル発展に貢献されてきたかを、この五日間勉強させてもらった。先輩から『こんなちょっとの時間じゃブラジルは見られないよ』と言われた。いつか改めてじっくり視察に来たい。本州の農地は平均2ヘクタール、北海道でも20ヘクタール、ところがブラジルは5千ヘクタールのところも。本当に想像を絶する。これを開拓してこられた皆さんに心から敬意を表したい」と述べた。
同大学事務局長の小林順さん(59歳、千葉県)も、「大勢の先輩にお会いした。ブラジルにいるOBの皆さんは、日本の政治や経済、将来に関して日本に住んでいる我々以上に心配してくれているのを痛感した。国内にいてはわからない見方、視点を教えて頂いた」と感謝した。
江口学長は「どこにいても農大のことを思っていてくださることを痛感した。卒業生本人が亡くなっても未亡人が駆けつけてくれるなど、農大ファミリーの絆の強さを感じた。世界に誇れる大学にならなくてはと襟を正しました」と語った。
同学長はモジ市でキノコ講演会、ブラジル日本商工会議所での講演、農大OB会の慰霊祭などに参加。一行は8月21日に来伯し、25日晩に帰国した。