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国際交流基金=メディアアート展SESCで=デジタル茶室やメタバースご近所さん

2025年10月17日

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「この展覧会を見た小さな子供が50年後、腑に落ちてくれればいいなと思って作品を選んだ」―国際交流基金が日伯外交関係樹立130周年を記念して聖市で開催中のメディアアート展「アンティポード、はるかなきみへ(Antípodas: tão distantes, tão próximos)」の一般公開前日の8日、本展のキュレーター森山朋絵氏は記者会見でそう説明した。

森山氏は東京現代美術館学芸員で、「35年間に50回ほど展示会をやっているが、こんなに広いスペースは初めて」と会場の印象を語った。会場は聖市のSESCヴィラ・マリアーナ(R. Pelotas, 141 - Vila Mariana, São Paulo)。同氏は大阪・関西万博でも「エンタングル・モーメント―[量子・海・宇宙]×芸術」展のプロデューサーを務めた。

「日本にとってブラジルは、まさに地球の反対側だが歴史的な繋がりも深い国だ。その遠くて近いと言う地理的、歴史的な要素を起点に、それを表現するのに適したテクノロジーを活かした体験型/共有型のメディアアート作品を選んだ」とし、テーマにある「アンティポード(対蹠地)」の視点を説明。「お互いの関係性に改めて目を向け、次の100年に向かって好印象が持てるような機会になってくれれば」とも語った。

出展作家には後藤映則、藤木淳、落合陽一、Zombie Zoo Keeperなど日本の新世代アーティストが13人も参加し、5フロアーに渡って展示されており、文字、錯視や身体、空間、デバイスなど多様な表現を展開する。

手書きの原稿が持つ直筆文字の魅力を、針金を用いて立体的に表現する作家・荒井美波さんは、本展のために作品『蒼氓』を作った。1935年に発表されたブラジル移民船に同乗した体験が書かれた石川達三の小説で、第1回芥川賞を受賞した。原稿用紙の1ページ目が再現されており、正面から見るとまるで手描き原稿に見えるのに、角度を横にずらしていくとウネウネした立体の針金になる。

他に、芥川賞の審査員をした川端康成の作品も。荒井さんは「書き順もそのまま針金で再現します。ヌメ革の上に文字を置いているので、時間が経つと革の色味が濃くなり、より風合いが出てきます」と説明した。

石田康平氏と畑田裕二氏が作ったメタバース・ウインドウスケープという作品は、遠隔地に住む住民同士がメタバース公共空間を共有し、モニターに映ったご近所の風景の中に映る「窓」の向こうの風景に映されたバーチャルなご近所さんとお互いの気配を感じがながら過ごすという「新しい遠隔共同生活の提案」だという。森山氏は「パンデミックが世界に吹き荒れた時代に生まれた作品」と説明した。

落合陽一氏はデジタルな茶室作品を展示している。落合氏は昨年10月、茶心サイトで「茶はメディアですね。マジでメディアアートっぽいですよね。だってまず茶室はインスタレーション(特定の空間全体を一つの作品として構成し、鑑賞者がその空間を全身で体験する現代美術の表現手法)じゃないですか。展示空間(=茶室)に入って、茶人が用意した掛け軸を見て、お花見て、花入れみて、そんな意味のある空間の中で茶碗が出てきて、体験としてお菓子食べてお茶を飲んで…空間の中には音もあれば光もあるのでインスタレーションそのものなんですよね」(https://x.gd/rDiFb)と語っている。

その茶室空間を、映像と質量の四句分別「テトラレンマ」として、華厳宗の教えの中心である「事事無礙」(この世のすべてのものごとが互いに関連しあい、侵し合うことなく、そのままで真実の世界を完成しているという仏教的世界観)をデジタルに表現している。



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