森田隆さん映画上映会19日=在伯原爆被害者、今年完成初上映

ブラジルの原爆被害者の支援に尽力し、長年に渡る平和活動を行ってきた森田隆さん(昨年死去)の生涯を主に撮影したドキュメンタリー映画「ALAMA ERRANTE-HIBAKUSHA(さまよえる魂)」が19日夜、サンパウロ市リベルダージ区のブラジル日本文化福祉協会大講堂で行われるSATO CINEMA(内)で開かれる。映画は今年完成し、初めての上映となる。さらにアメリカの映画祭への出品も決まり、在ブラジル原爆被害者の会の盆子原国彦代表は「森田さんの人生、平和への願い、これからの時代に平和を繋いでいく作品」と思いを込める。
映画はサンパウロ州の助成金を得て、映画監督のジョエル・ヤマジさん(日系2世)が撮影した。約20分の短編で、過去の映像と森田さんの記憶、当時から現在までの情景をインタビューを基に撮影し、「戦争を生き抜いた人間の物語」としてまとめた。
撮影は昨年5月、サンパウロ市イビラプエラ公園内の日本館で行われた。在ブラジル原爆被害者の会から森田さんのほか、渡辺淳子さん(広島県出身)が出演している。
森田さんの娘の斉藤綏子さんは撮影時のエピソードとして、最後に流れる音楽は何がいいかを考えていた時、撮影に協力していた大学院生が流した「愛燦燦」(美空ひばり)の曲を、森田さんが歌い出したことが印象に残っていると言う。「母(森田さんの妻・綾子さん)が好きだった歌。映画のテーマとぴったり」と思い、選んだ。
映画はアメリカの「サンディエゴアジア映画祭」(11月)への出品も決まった。綏子さんは「100歳だった父が最後に出演した作品。父は亡くなる前、『もう少し一生懸命に(活動を)やっていたら。情けない』と言っていて、亡くなった2カ月後に日本原水爆被害者団体協議会がノーベル賞を受賞した。もう少し早かったら父に伝えられたのにという思いと、認められたという嬉しさがあった」と森田さんへの思いを振り返り、「今はいつ核兵器が使われるか分からない時代。映画は日本にいるのとは違った見方ができると思う」と話した。
サンパウロ市での映画上映は、「第49回サンパウロ国際映画祭(Editorial―49ª Mostra Em Busca de Pérolas)」内で行われ、19日午後7時からの「黒い雨(Chuva Negra)」(1989)の後に上映される。また、27日15時35分からもサンパウロ市内CINEMATECA SALA PETROBRASで予定されている。