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ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(270)

2025年10月21日


前衛隊の首魁山岸宏伯なる中年男は、写真を見ると、縁なしの色眼鏡をかけ薄笑いを浮かべている。

この男、五・一五事件の「問答無用、撃て!」で有名な山岸宏中尉である、という噂があった。

当人が「自分は、その山岸中尉だ」と名乗ったのではなく、配下が、そういう噂を流して歩いた。

ただし本物は、海軍中尉で陸軍憲兵中尉ではない。

前章までに何度も登場した日高徳一は、アンシエッタから仮釈放され自宅に戻っていた時、この山岸の訪問を受けた。そのとき彼は、

「時期が来たら、裃をつけて、もう一度来ます」

と、暗示的なセリフを口にした。裃が軍服を意味することは直ぐ判った。

日高は父親から...

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