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【5日の市況・速報】ブラジル株急落、Ibovespaは4%超の下落 ―ボルソナロ前大統領、長男フラヴィオ氏を大統領候補に指名/ 政治リスク再燃で市場心理悪化、為替・金利も急変動

2025年12月6日

南米・ブラジルの金融市場・政策・国際情勢動向



12月最初の金曜日、ブラジル金融市場は一転して大荒れとなった。株式指標のIbovespaは前日比4.31%安の15万7,369.36で取引を終え、午前中に史上初の16万5,000ポイント台に乗せた勢いは急速にしぼんだ。1日の下落幅としては、2021年2月22日以来の大きさとなる。

市場が急落した最大の要因は、午後に報じられた政治関連ニュースであった。2026年大統領選に向け、前大統領ジャイル・ボルソナロ氏が長男のフラヴィオ・ボルソナロ上院議員を「後継候補」として指名したとの報道が市場を直撃し、投資家心理を一気に冷え込ませた。

為替市場でも動揺が広がり、ドルは一時3%高まで急伸。終値は2.31%高の1ドル=5.43レアルと、レアルは大幅安。金利先物(DI)は全ゾーンで急騰し、一時取引停止となるケースも出た。

以下では、市場がこれほど強く反応した背景と今後の展望を整理する。


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一時は史上最高値の16万5,000ポイント

― 午前中は「祝賀ムード」、午後に急転 ―

この日のブラジル市場は本来、上昇基調で始まっていた。
● 米国の個人消費支出(PCE)物価指数が予想通り
● 欧州市場が堅調
● ブラジルの生産者物価指数(PPI)が9カ月連続の下落
● 政府と議会の関係改善を示すシグナル
● 2026年サッカーW杯の組み合わせ抽選で「比較的易しい組」

こうした材料が重なり、午前中のIbovespaは16万5,035ポイントと史上最高値をつけた。週間でも高値更新が続いており、市場には「今年最後の上昇相場」といった期待感が広がっていた。

しかし、この楽観ムードは午後の一本の記事で一変した。

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ボルソナロ前大統領、長男フラヴィオ氏を大統領候補に指名

― 野党内の“分裂”を懸念、財政規律への期待後退 ―

午後一番に、ニュースサイト「Metrópoles」が重大情報を報じた。

「ボルソナロ前大統領が長男フラヴィオ氏を2026年大統領選の候補に指名」

報道後、フラヴィオ議員自身もX(旧Twitter)で事実を認め、
「父であり政治的・道義的指導者であるボルソナロ氏から、国家プロジェクトを継承する使命を受けた」と投稿。ニュースは瞬く間に市場全体に広がった。

市場関係者の受け止めは厳しい。

マンチェスター・インベスティメントのルーベンス・シッタジン氏は、「この指名は保守・中道勢力の結集を妨げる」と指摘する。「市場は本質的に“政治的立場”には無関心だ。重視するのは金利と財政バランスである。現行の15%近い高金利は財政拡張が主因。これを引き締め方向へ転じ得る“中道的な野党候補”の登場に期待が集まっていた」

フラヴィオ氏の指名は、
● 右派票の割れ
● 中道勢力を巻き込む可能性の後退
● 財政規律への期待低下

につながるとの見方が強い。

ダニロ・コエーリョ氏(経済学者)は、「より穏健で改革志向の候補が台頭する可能性が後退した」と述べた。

結果として、
「改革後退 → 金利高止まり → 企業収益圧迫」
の連想が広がり、株式市場の全面売りにつながった。

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金融市場の反応:株・為替・金利が同時に変調

― ドルは5.43レアル、DI金利は急騰 ―

● 為替(ドル/レアル)
・昼過ぎ:5.30割れまでレアル高
・指名報道後:急反転し5.40台へ
・終値:5.43(+2.31%)

「右派内部の広範連携が崩れ、2026年選挙でルーラ大統領再選の可能性が高まった」と分析するエコノミストも。

● 金利先物(DI)
政治不確実性の高まりを受け、20bp以上の急騰。途中でサーキットブレーカーが作動したゾーンもあった。

● 株式
ほぼ全面安。代表銘柄も大きく下落した。

<主な下落銘柄>

  • ヴァーレ:▲2.36%

  • ペトロブラス:▲3.54%

  • Axia Energia:▲5.33%

<銀行株>

  • バンコ・ド・ブラジル:▲7.07%

  • ブラデスコ:▲5.97%

  • イタウ:▲4.62%

  • サンタンデール:▲4.41%

<小売>

  • マガジン・ルイザ:▲9.79%

  • ロジャス・ヘネール:▲7.71%

投資家がリスク資産のポジション調整に動いた結果、「逃げ場なき全面安」となった。


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なぜこれほど市場が反応したのか

― “財政の先行き”が最大の焦点

市場が最も懸念しているのは、2026年以降の財政規律である。

ブラジルは現在、高金利政策を維持しつつ、財政拡張的な姿勢を続けている。
市場は本来、
● 中道右派の候補が一本化 → 財政引き締め期待 → 金利低下 → 株価上昇
というシナリオに望みをつないでいた。

しかし、今回の指名は右派の“内部競争”を激化させる可能性が高く、市場が期待していた「財政規律を重視する候補の登場」が遠のいた格好だ。

政治アナリストのレオポルド・ヴィエイラ氏は、「今回の決定は中間層・穏健層の支持を得にくい構図を生み、結果としてルーラ再選の可能性を高めた」とみる。

また、最近の世論調査では、
● サンパウロ州知事 タルシジオ・デ・フレイタス
● 元大統領夫人 ミシェル・ボルソナロ

の方が、フラヴィオ氏より競争力が高いとの結果も出ている。


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ボルソナロ前大統領は収監中

― 27年超の刑期、2023年からの公民権停止 ―

今回の指名は、ボルソナロ氏自身が既に立候補できない状況だからこそ起きたものだ。

● 2023年:TSE(選挙高裁)により8年間の政治権利停止
● 2025年:クーデター未遂事件で有罪、連邦警察施設で服役中

そのため、右派勢力の実質的な後継候補が誰になるかは大きな政治テーマとなっていた。

PL党首ヴァルデマール・コスタ・ネト氏は、「ボルソナロが言ったことは絶対。党として全面支持する」と述べ、党内の足並みは固められた格好だ。


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議会情勢:アルコルンブレ上院議長と政権の関係改善も

― 連邦予算法(LDO)が可決、緊張緩和の兆し ―

この日、ブラジルの政治ニュースは本来、より穏やかなトーンで伝えられるはずだった。

● LDO(2025年予算法の方針)が可決
● 上院議長アルコルンブレ氏が対立姿勢を緩和
● 政府側は「Messias長官の最高裁指名は2月に再協議」と前向き

政府と議会の関係改善は、市場にとってプラス材料であった。

しかし、フラヴィオ氏の指名が全てを上書きした形だ。


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ブラジルの富裕層は世界19位

― UBS「Global Wealth Report 2025」:43万3千人のミリオネア ―

市場混乱とは別に、この日はもう一つ注目すべき指標が公表された。

UBSの「グローバル・ウェルス・レポート2025」によると、ブラジルには433,000人の“投資可能資産が100万ドル超”の富裕層が存在し、世界19位となった。

これは、
● スウェーデン(8.5万人)
● ノルウェー(8.3万人)
● オーストリア(7.7万人)
● アイルランド(6.5万人)

といった先進国を上回る数字である。

近年、
● 高金利
● 通貨安
● 経済の不安定化

といった環境が続いているにもかかわらず、資産家層は大きく減らず、むしろ安定的に推移している点が特徴だ。


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来週は「スーパー水曜日」

― ブラジル中銀と米FRBが金利決定 ―

来週には重要イベントが控える。

● ブラジル中銀(Copom)金利決定
● 米国FRBのFOMC

FedWatchによれば、「0.25%利下げ」の確率は87.2%に達しており、米国側はサプライズが出にくい状況となっている。

一方、ブラジルは財政と政治の不透明感が高まっており、
中銀の判断に市場の注目が一段と集まっている。

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まとめ

― 「政治の一報」が市場全体を揺さぶる構図は続く

今回の急落は、ブラジル金融市場がいかに政治動向に敏感であるかを改めて示した形となった。

午前中の最高値更新からわずか数時間で全面安へ転じた背景には、「改革期待の後退」と「2026年選挙の構図変化」という根深い懸念がある。

来週の「スーパー水曜日」を前に、市場は神経質な展開が続きそうだ。




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