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米国民にベネズエラ退避を勧告=マドゥロ「ブラジル国民よ街頭に出て」

2025年12月6日

万華鏡1
2日、カラカスで行われたトランプ大統領への抗議デモで演説するマドゥロ大統領(Foto: RS/Fotospublicas)

【既報関連】ベネズエラ国内での権力闘争と国際的圧力が一段と顕著になっている。トランプ大統領は2日、米国が〝間もなく〟ベネズエラ国内の麻薬組織の指導者を標的に地上攻撃を行うと警告。米政府は翌3日、米国民および永住権保持者に対し、ベネズエラから「直ちに」退避するよう強く勧告した上で、渡航リスクが最高レベルの「レベル4」であることを改めて警告し、緊迫感が一気に高まった。

これを受け、ベネズエラのマドゥロ大統領は4日、お隣のブラジル国民に対し、ベネスエラの平和と主権を守るため、街頭に立つよう呼びかけるなど、国内外での緊張が高まっている。米国の麻薬関連攻撃や外交的圧力と呼応する形で、南米地域全体の安全保障上の不安も拡大していると5日付ヴァロール紙などが報じた。(1)(2)

米国務省による今回の警告では、ベネズエラ国内での不当拘束、拷問、テロ、誘拐、都市部の暴力、抗議活動への弾圧、医療インフラ崩壊の可能性がリスクの根拠として挙げられている。声明では、同国内での移動は陸上国境の横断も含めて危険であり、2019年の全外交団撤収以降、米国には領事支援の能力も存在しないと指摘。滞在者に対しては、自力での退去や医療用品の携行、家族との連絡手段の確保、必要に応じた民間警備サービスの利用が推奨されている。

トランプ大統領は2日、「我々は彼らの居場所を把握しており、陸上の方が容易だ」と発言。米国は現在、ベネズエラ沖に複数の軍艦と軍用機を配備している。米軍による洋上での麻薬疑惑船舶への攻撃は、5日までに少なくとも22回実施され、80人以上が死亡した。だが、9月2日にカリブ海で行われた船舶攻撃では、ピート・ヘグセス国防長官が生存者を出さないよう命じたとする報道があり、攻撃の合法性が議論を呼んでいる。

軍事的圧力と並行し、トランプ政権は5日、新たな外交戦略文書を公表。文書では、西半球における米国の「防衛」上の役割を強化し、モンロー主義(欧州諸国の米大陸干渉を排除する米国の外交原則)の再確認と適用によって、地域での米国の優越性を回復すると明記されている。

さらに、地域諸国から同盟国を募り、移民管理や麻薬流入阻止、陸海上の安定・安全確保を目指す「再勧誘と拡張」の方針も示され、関係構築と強化を図ることが明文化されている。文書は、西半球における経済的・安全保障上の優先的パートナーとしての米国の立場を強調して締めくくられている。

こうした国際的圧力のなかで、ベネズエラ国内ではマドゥロ大統領の呼びかけが注目される。4日、マドゥロ氏は国営放送テレスールの番組内で、ポルトガル語とスペイン語を混ぜた「ポルトニョール」でブラジル国民に語りかけた。「ブラジル国民よ、ベネズエラの平和と主権を守るため街頭に出てほしい。我々には平和と主権を享受する権利がある」と発言し、両国民の結束を強調した。

マドゥロ氏の呼びかけは、ブラジル人実業家ジョエスレイ・バチスタ氏がカラカスを訪れ、マドゥロ氏に辞任を求めたとの報道が出た翌日に行われた。ブルームバーグ通信によれば、米政府は訪問を把握していたが、バチスタ氏は個人的判断で行動したとされる。ブラジル大統領府は、同氏が政府代表として行動した事実はなく、マドゥロ氏がブラジルに亡命を求めた事実もないと否定している。

米国の軍事的圧力とマドゥロ大統領の隣国への呼びかけが交錯する現状は、南米全体の安全保障に不安を広げている。ベネズエラ情勢は、国内政治の緊張、国際的圧力、地域の安全保障上の懸念が複雑に絡み合う形で、一段と先行きが見えない局面に突入している。


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