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同人誌『西風』22号刊行=移民体験談やエッセー14編

2026年1月13日

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表紙

西風会は2025年11月、同人誌『西風』22号(272ページ)を刊行した。エッセーや小説、社会時評、論考など約14編を収録する。同会は、幅広いテーマについて意見を交わす私的な研究会として活動を続けている。

本号では、昨年5月に亡くなった常連執筆者、山内伯子さんを追悼し、作品「徒然なる日々」を掲載した。作中では、読書体験と自己の内面が静かに重なり合う。「最近は、読んだ本のヒロインになりすます癖がついてしまった。ここ二、三日、『天涯の花』の珠子になりきっている」と始まり、剣山を舞台に思慕と幻想が交錯する場面が描かれる。久能の姿を夢現に見る瞬間、ふと我に返り、南国の陽光に照らされた真紅のブーゲンビリアが庭に咲き誇っている情景で結ばれるとの一節は、現実と心象の往還を印象づける。

春日井真英さんの「自分の中のインド その種は?」は、親の仕事の関係で小学2年から高校1年までの多感な時期をインドで過ごした経験をたどる随想だ。カルカッタ(現コルカタ)から急行で3時間ほどの大学町に暮らし、「大学やその周辺にいた日本人は僕たち家族四人だけだった」と振り返る。〈もしインドに留まっていたならば、自分はどうなっていただろう〉という問いとともに、帰国を選んだ父の決断が現在の自分を形づくっているという思いを率直に記す。

井口道子さんの「ある郷愁」は、イタケーラに住んでいた頃の記憶を軸に展開する。大戦後、グアム島で約30年潜伏していた横井庄一の著書『最後の一兵』を読んだことをきっかけに、かつてその地域に暮らしていた一人の男性を思い出す。無口で静かな人物が、会合の席で時折拳を振り上げ「大和魂を忘れてはならん」と声を張り上げた場面が、横井の発言と重なってよみがえるという回想は、時代の影を淡く映し出す。

同誌は1冊45レアル。フォノマギ書店および本紙編集部で販売している。問い合わせや投稿に関する連絡は、中島宏さん(メール nakashima164@gmail.com)まで。


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