CCBJ=ブラジルに根付く「感動価格」の衝撃=ダイソー大野氏に年間最優秀賞=教育と絆で挑む巨大市場
【東京】在日ブラジル商工会議所(CCBJ、行徳セルソ会頭)は、ブラジルと日本の経済交流に多大な貢献を果たしたとして、ダイソー・ブラジルの大野恵介CEO(最高経営責任者)を「CCBJアワード・パーソン・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀賞)」に選出した。2月19日、東京・外苑前の駐日ブラジル大使館で開かれた表彰式には、オタヴィオ・コルテス駐日大使をはじめ政財界の要人が顔を揃え、南米の大地で「日本流」を浸透させたリーダーの功績を称えた。
式典の冒頭、行徳会頭は選出の背景を次のように語った。「2010年の進出以来、日本の生活用品モデルをブラジル市場へ見事に適応させた。その核心にあるのは、日本の『ものづくり』が持つ品質と効率性を、ブラジル特有の多様性と創造性に融合させた大野氏の手腕だ」。行徳氏から、故・大竹富江氏デザインの記念トロフィーが手渡されると、会場は温かな拍手に包まれた。
壇上に立った大野氏は「これほどの賞をいただけるほど、貢献できているのか」と謙遜しつつ、自身の歩みを静かに振り返った。「日系企業としていかに信頼を積み重ね、現地従業員と絆を結べるか。既存店を愚直に守り、出店を継続してきた姿勢を評価していただけたのではないか」と、受賞の意義を噛み締めた。
同社は現在、ブラジル全26州のうち12州に展開。2025年には194店舗に達し、大台の200店舗も目前に迫る。同社が掲げる「ワンプライスで生活を豊かにする」というビジョンの前に立ちはだかるのが、連邦・州・市が複雑に絡み合うブラジルの税制だ。州をまたぐだけで税率が変わる過酷な環境下で、厳密な一律価格の維持は容易ではない。それでも大野氏は「『感動価格』を届けることだけは譲らない」と言い切る。
経営の根底に流れるのは、家族を何より尊ぶブラジルの文化だ。「従業員は会社という名の家族」――。治安の不安定な現地では、店舗運営で予期せぬ困難が相次ぐ。しかし、そのたびに「家族」として助け合い、荒波を乗り越えてきた。
教育格差という社会課題にも正面から向き合う。十分な教育機会を得られなかった従業員に対し、仕事場を「学びの場」として開放。ビジネスの基礎となる数字の読み解き方を説く。エレベーターが故障すれば、従業員が列を作り、3階までバケツリレーで荷物を運び上げる。そんな泥臭くも結束力の強い現場が、同社の強みだ。
会場には、勤続10年を迎える日系3世の落合ヒロミさんの姿もあった。「会社に行きたくないと思ったことは一度もない。毎日笑いながら、でも真剣に働けるのが楽しい。大野さんの受賞は、私たちの誇りです」。その笑顔は、大野氏のリーダーシップが現場の隅々まで浸透していることを物語っていた。
祝宴で乾杯の音頭を取った外務省の石瀬素行中南米局長は、「大野氏の情熱は、シャンパンタワーのように組織の末端まで行き渡っている」と、信頼を基軸にした経営を絶賛。ブラジル連邦議会の西森ルイス下院議員は「私の妻は日本のダイソーで『爆買い』し、荷物を入れるためにスーツケースを買い足したほどだ」とユーモアを交えて語り、会場の笑いを誘った。
レセプションには、ブラジルでラーメン事業を展開するトライ・インターナショナルの田所史之社長や、提携先の美容化粧品店「ソネダ」のエンゾ・カマチ氏ら、国境を越えて挑戦を続ける仲間たちも集結。日伯の経済を繋ぐ「顔」となった大野氏の門出を、賑やかに祝った。








