日本の口座、維持に複合リスク=管理不備なら罰金の可能性も
この1月1日から適用になった「非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度」に関して、日本の金融庁サイトのFAQ(よくある質問)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/pdf/0025009-018.pdf)によれば、ブラジルに居住しながら日本の銀行口座を保持する在外邦人に関して、金融機関や税務当局による管理が日伯双方で強化されているので注意が必要だ。マネーロンダリング対策や越境送金の透明化が国際的に進む一方、利用者側が制度を十分理解していない例も多く、口座の凍結、取引制限、さらには税務上の罰金といったリスクに直面する可能性が高まっている。
■日本側:非居住者は口座維持自体が「例外扱い」
そもそも現在の日本では、非居住者が新たに銀行口座を開設することは原則として認められていない。海外転居後に既存口座を維持するには、銀行に「非居住者届」の提出が必要となるが、提出せず放置したまま出国する例が少なくない。金融機関は数年に一度、住所確認を実施しており、送付した郵便物が「宛先不明」で戻ると、カード停止、オンライン取引の遮断などの措置が取られる場合がある。
非居住者は利用できるサービスも限られる。定期預金・投資信託などの新規契約、NISA口座の開設・維持は不可。住宅ローンの借換えや一部の保険商品も非対象となる。海外送金についても目的確認が厳格化され、資金の由来説明を求められるケースが増えている。
■ブラジル側:送金税・資産申告義務が年々強化
一方、ブラジル側の税務上の義務にも注意が必要だ。2024年から段階的に強化されているのが、国際送金に課されるIOF(金融取引税)の新制度だ。ブラジルから日本へ送金する場合、名義人の口座間送金であっても、送金目的や金額に応じて税率が異なり、審査が厳しくなっている。
また、ブラジル居住者が国外に保有する資産は、ブラジル連邦税務局(Receita Federal)への申告義務がある。
▼国外資産の年次申告(Declaração de Capitais Brasileiros no Exterior:CBE)
▼所得税申告(IRPF)の国外資産欄への記載
特にCBEは、国外資産10万ドル(1585万円相当)以上で申告義務が生じる。日本の銀行口座に預金を保有している場合も対象となり、申告漏れには罰金が科される。さらに、口座残高が小額であっても、国外からの利子所得をIRPFで申告する必要があるなど、在外資産全般に対する透明性が求められている。
■「日本の口座は安心」では済まされない時代に
ブラジル税務の専門家は、「国外資産を持つブラジル居住者は、情報連携(CRS)の進展により『日本にあるから安全』という考えは通用しなくなっている」と指摘する。CRS(Common Reporting Standard)は、各国の金融機関が非居住者の口座情報を税務当局に自動的に通報する制度で、日本とブラジルも参加国として連携している。
これにより、日本の銀行にある預金残高、利息、口座名義情報は、ブラジル税務当局に共有され得る。申告を怠った場合、後から指摘され、追徴課税や罰金が発生するリスクが高まっている。
■「持つこと」より「維持できるか」が重要に
日本の銀行口座は、日本に家族がいる場合や帰国時の生活基盤として役立つが、海外居住者にとっては管理負担も大きい。住所変更の遅れや銀行からの連絡が受け取れないことで、口座が凍結する事例も起きている。解凍手続きは複雑で、海外からでは困難を極める。銀行によっては、非居住者口座を「例外的に維持を認める」だけにとどめ、長期的な保持を推奨していないところもある。
専門家は、「日本の口座は〝持てるかどうか〟ではなく、〝維持できるかどうか〟を常に確認する必要がある」と強調する。加えて、ブラジル側では送金税や国外資産申告の義務があるため、日伯の規制を総合的に把握することが欠かせない。
国境を越えた働き方や移住が進むなか、日本の銀行口座をめぐるリスクは今後さらに顕在化しそうだ。在外邦人に求められるのは、複雑化する両国制度を踏まえた、計画的な資産管理だ。









