今回のCOPANIにメキシコからは9人が参加した。メキシコ日系社会の歴史は1897年、グアテマラとの国境、チアパス州の榎本植民地に35人の日本人が移住したところから始まる。同国日系社会に詳しい社団法人日墨協会の松本安弘会長(66歳・1世)に話しを聞いた。
メキシコへの日本人移民はメキシコ革命(1910年~17年)後、同国北東部ヌエボ・レオン州モンテレイ市近郊などに集中し、日本人移民は同地で鉄道引きやさとうきび栽培に従事した。
第2次世界大戦が勃発すると、メキシコ政府は日本人のスパイ行為を防ぐ為、日本人移民を強制的にメキシコシティに集めた。日本政府関係機関や銀行も停止され、土地や財産を手放すことを余儀なくされた日本人移民はメキシコシティで人生の再出発を強いられた。
メキシコ政府は戦後、日本政府に約6万ドルを返却し、その資金をもとに日墨協会が設立され、1959年には協会施設が建設された。
日墨協会の会員数は現在約100人。会費だけで協会を維持することは難しく、4年ほど前から営利活動部門を組織し、レスラン経営や賃貸事業を始め、調達した資金で文化活動を行っているという。
文化活動ではメキシコ人も参加して、生花や舞踊、柔道、太鼓などの日本伝統文化を普及し、春と秋にはお祭りも開催している。
青年部には約60人が所属。年に1度、1週間ほどキャンプをして若者同士で交流する。キャンプは国外でも行われる。これらの活動は日系人アイデンティティを育成するために10年以上にわたって行われているという。
現在、メキシコ国内では10以上の日系団体が活動している。榎本植民地では移住者子孫が協会活動を行い、戦中に移住が押し進められたメキシコシティには同国で最も多くの日系人が住み、団体活動を行っている。祖父母の生い立ちに関心を持つ3世、4世が団体を設立する例もあり、今年4月にはモンテレイ市で第16回メキシコ全国日系人大会(CONANI)が行われた。次回は2年後に開催予定だ。
また、4月にはメキシコ人向け日本文化イベント「エクスポ・ジャポン(EXPO JAPON)」がモンテレイ市で行われ、2万人以上が来場した。
松本会長は日本で生まれ育ち、10歳の時に父親の仕事の関係でメキシコにやってきた。当初は一時駐在の予定だったが、一家がメキシコ生活に馴染んだこともあり、そのまま移住した。松本会長の世代は3世が多いという。
松本会長はメキシコ日系社会の今後の課題として、「中南米日系社会の中には老人ホームを備えている国があるが、メキシコにはない。日墨協会では月2回、高齢者の集いを開くなどしているが、今後は高齢者福祉や医療関連分野の活動を充実させたい」と語った。