2023年5月から、サンパウロ州アチバイア市、アチバイア日伯文化体育協会(以下文協)の日本語学校で日本語教師として活動している森岡弘子です。アチバイア市は、サンパウロの中心から北へ約80kmのところにある、日系人の多い街で、毎年9月に「花と苺祭り」が開かれることでも有名です。
私は、50年来の夢を果たしにブラジル日系社会に来ました。小学校の時にブラジルへ移住した人々についての物語を読み、いつか私もブラジルに行って、開拓した土地や日系社会を見てみたい、自分に何かできることがあれば手伝いたいと思っていました。
ブラジルに来る前には、もう一つの目標を持ちました。小学校教師をしていましたので、帰国後はブラジルの日系社会を伝え、ブラジル人親子と学校を結ぶ支援ボランティアをすることです。ですから、ポルトガル語を覚えるのは必須ですので、生徒や家族、他の日系団体や知り合った方達に「ポルトガル語を教えてください」と頼んでいます。すると、私が理解できるような言葉で教えてくれたり、ブラジルの家庭の様子が分かるようにと家に招いてくれたりして、ブラジルの方達はとても優しいです。
日系社会やブラジルの文化を理解するのも、日本に戻って日系人、ブラジル人の支援にとても大事なことです。小学校や日本語学校で教えていたときは、私は大勢の日本人の中の一人で、日本文化にどっぷりとつかって教えていました。それが、今は全く逆の立場になるというのも、日々本当に勉強になります。日系の方で日本語を上手に話されているので、ついつい日本にいる感覚で話していると、「ひろちゃん、そんな難しい言葉、使わんでよ」と言われることもあります。正直にそう言ってもらえることで、とても勉強になっています。
日本文化を伝えることは私の仕事の一つですが、これも逆に学ぶことがとても多いです。日本のお菓子や料理を作る体験教室でのことでした。本校では、7歳から84歳という幅広い生徒がいますので、小学校のお楽しみ会でよくやっていた「お団子作り」を計画しました。簡単に作れ、作り方が粘土遊びみたいで楽しいので、子どもにも人気の和菓子作りの一つでした。味は、3種類(みたらし、粒あん、きなこ)を用意しました。子ども達と作った時のことです。粉を水でねって、まんまるに丸めます。子ども達は、目をキラキラさせて楽しそうに作り、茹でて味をつけるところまでは順調でした。さて、食べてみると・・・、団子がのどを通らないのです。小学生の子どもは、日系もブラジル人も同じでした。中学生~高校生になると、「うっ」と一瞬考えた表情で食べていました。大人になってくるとおかわりする人もいました。年齢別の反応が見事でした。
粒あんがブラジルのフェイジョンに似ており、塩味のはずが甘いという違和感がそうさせたのかもしれません。日本では、多少の好き嫌いはあっても、みんな食べていましたので、味や食感などの食生活の違いでの反応に、これも新鮮な驚きと学び、そして安易に計画したことを反省しました。
でも、みたらし味は、大人には好評でしたので、ぜひ作ってみてください。もち米粉は、ブラジルでも売られています。水を減らして、つぶした豆腐を入れると、一段と柔らかく栄養も増えて、年配の方や子どもにも食べやすくなりますので、おすすめです。(みたらし団子レシピ参考URL https://www.sirogohan.com/recipe/mitarasi/)
私に残された時間は一年を切ってしまいました。ブラジルの人達の温かさ、優しさに出会い、囲まれ、あまりの居心地の良さに、「私は今、本当にブラジルにいるのか~?」と思うことも多いですが、2つの目標に少しでも近づけるように悔いの無い日々を過ごしたいと思っています。