《ブラジル》ペトロブラスCPI開設にこだわる大統領=与野党が別々の目的で設立へ=総裁辞任後の後任人事進むも

ペトロブラス(PB)のジョゼ・マウロ・フェレイラ・コエーリョ総裁が辞任し、後任人事の準備が進められているものの、ボルソナロ大統領はなお、PBの議会調査委員会(CPI)開設に意欲を見せている。ただ、その足並みはそろっていない。20、21日付現地紙、サイトが報じている。
選挙年もインフレ高進が止まらず、燃料代の値上げが問題となっている中で再度行われたガソリンとディーゼル油の値上げで、ジョゼ・マウロ氏は総裁の座を降りた。次期総裁はもう指名済みだが、正式な任命までは生産部門担当理事のフェルナンド・ボルジェス氏が代行を務めることも発表されている。
連邦政府が後任総裁に指名しているのは、カイオ・パエス・デ・アンドラーデ氏だ。アンドラーデ氏は現在、経済省で事務手続簡易化などを手がける部門の局長を務めるなど、パウロ・ゲデス経済相の右腕役として知られている人物だ。
アンドラーデ氏の名前はボルソナロ大統領がコエーリョ氏の解任を言い出した時に出ていた。5月23日に同公社の経営審議会が、「連邦政府が経営審議会の委員候補者のリストを提出し、人事委員会が承認してからでなければ、総会が開催できないし、経営審議会の交代を行わなければ、後任総裁の正式な承認と任命は行えない」と返答。連邦政府による経営審議会の委員候補のリストの提出が遅れていたためにジョゼ・マウロ氏が総裁職に留まる形となっていた。
このように、PBの人事は進んでいるが、ボルソナロ大統領はまだPB関連のCPI開設にこだわっている。CPI開設要請は20日に出され、大統領所属の自由党(PL)下院リーダーのアウチネウ・コルテス下議が署名を集めている。アルトゥール・リラ下議(進歩党・PP)もCPI開設を急がせようとしている。
一方、野党側も同社の経営方針に疑問を抱き、「株主の配当などはどうなっているのか」などを調べたがっており、別途署名を集めている。大統領選でボルソナロ氏の対抗馬であるルーラ元大統領も法定アマゾンの問題とPB問題を政策課題として強調し始めており、PBが私腹を肥やしているとの見解も抱いている。同氏は現政権が進めようとしているPB民営化にも強硬に反対している。
ただ、野党側と与党側ではCPI開設の意図が微妙に異なる。下院連邦政府リーダーのリカルド・バロス下議(PP)は、「PBのCPIではなく、価格設定のCPIだ」と語り、PB内部にメスを入れるものではなく、価格の決め方についてのものと見ている。
また、一方で、アドルフォ・サクシダ鉱山動力相は「最大株主として多額の配当金を受け取ってはいるが、連邦政府がPBに介入することは不可能」と、CPI開設に慎重ともとれる発言を行った。
そもそも、PB総裁は大統領が指名し、経営審議会のメンバーも大半が連邦政府派であるため、大統領によるPB攻撃は「値上げの責任を同社になすりつけている」「選挙のためのイメージアップが目的では」と指摘する声も出ている。