《ブラジル》大統領選で両候補とも議会勢力は過半数以下=ボルソナロは保守政党説得必要=ルーラは中道との交渉次第

【既報関連】2日の選挙で内定した下院や上院で、ルーラ氏(労働者党・PT)も、同氏を獲得議員数で上回ったボルソナロ氏(自由党・PL)も、大統領当選時に支持が見込める議員数が過半数に達しておらず、当選後の調整が必要になると、7日付現地紙、サイトが報じている。
ブラジルでは、下院で過半数を占めるには256議席、上院では41議席が必要だが、現状では両候補とも、その数に達していない。
ルーラ氏は自身のPT、フェデラソン(最低4年の連立関係)を組んだブラジル共産党(PCdoB)と緑の党(PV)、大統領選でルーラ氏と連立したブラジル社会党(PSB)、社会主義自由党(PSOL)、レデ、連帯(SD)、アヴァンテ、社会秩序共和党(PROS)、そこに決選投票でルーラ氏を支持した民主労働党(PDT)とシダダニアを加えても、下院で144人(28%)、上院で16人(19・75%)だ。
一方のボルソナロ氏は自身のPLと、大統領選で連立した進歩党(PP)と共和者(RP)、決選投票で支持を表明したブラジル労働党(PTB)とキリスト教社会党(PSC)を足して、下院で194人(37・8%)、上院で25人(31%)となる。
ただ、これだけでは過半数に票が満たず、議会運営は容易ではない。ボルソナロ氏は2019年からの任期当初、「政党ではなく、銃、農業、福音の派閥で多数派を狙う」としていたが、2020年のパンデミックの頃に罷免請求が相次いだことで限界を感じ、中道勢力セントロン、特に以前所属したPPの力を借りはじめた。
こうした事情から、ルーラ氏もボルソナロ氏も他の政党の力を借りなくてはならなくなるが、有利なのはボルソナロ氏の方だ。それは、ウニオンやポデモスなどが自身に主義が近い保守系政党だからだ。特にウニオンは、自身がかつて所属していた社会民主党(PSL)も含んでいる。
だが、ウニオン、ポデモスは共に、党内にはボルソナロ派が多いものの、いずれも党首や党幹部がボルソナロ氏と対立関係にあるため、連立までこぎつけにくいことが問題だ。
ルーラ氏の場合は、社会民主党(PSD)や民主運動(MDB)との交渉がありうる。PSDはセントロンの一つで、党内にはルーラ派もボルソナロ派もいるが、親ルーラ派は大統領選の時点で既にかなり好意的だった。MDBはジウマ大統領罷免時の遺恨解消が鍵となるが、決選投票ではシモーネ・テベテ氏の支援を得ている。
また、今回選挙で惨敗し、議席を大幅に減らした民主社会党(PSDB)をどう扱うかの問題もある。同党は歴史的に反PTだったため、現在もそれを引きずる党員も少なくない。だが、その一方、軍政擁護で専制主義的なボルソナロ氏を党上層部が激しく嫌悪している。その上、かつては党重鎮だったジェラウド・アウキミン氏がルーラ氏の副候補でもあることから、重鎮の多くは決選投票ではルーラ氏に投票と宣言している。民主主義擁護で固まれば、歴史的変化が起こることも考えられる。