労働と環境の検査が原因?=農業界のボルソナロ支援

大統領選はルーラ氏が1・8%ポイント差という民政復帰後の選挙で最僅差の接戦を制して当選を果たした。接戦の要因ともなったのは、農業界にボルソナロ氏を支援する傾向が強いためだ。ヴァロール・エコノミコ紙では、記者のマルシレア・ゴンバタ氏らが、農業界がボルソナロ氏を支援する理由について語っている。
20日付G1サイトなどが掲載した記事によると、アグリビジネスはルーラ、ジルマの労働者(PT)政権に底入れされたが、労働や環境の監視や検査への抵抗がアグロビジネス部門をボルソナロ氏支持に導いたという。
ブラジルのアグロビジネスの中心は、南部とサンパウロ州の内陸部を走り、中西部と北部との堺に至るベルト地帯だ。この地域が大統領選でボルソナロ氏を支えた事は、地域別の支持率を表す地図などでも明らかだ。
ゴンバタ氏によると、農業部門の国内総生産(GDP)は他部門と比べ、25・6%も多く成長している。他方、ブラジルのGDPの60%を占める他部門は、2019~22年には3・8%しか成長していない。
この成長率の差は、大豆やトウモロコシなどの輸出品目に焦点を当てた外的要因によるものだ。「ブラジル・アグロ」の大当たりを説明する理由の一つは国際市場での価格で、特に昨年はブラジルが輸出するコモディティの国際価格が非常に有利に働いたという。
しかし、『アグロビジネスに関する政策形成』の著者のカイオ・ポンペイア氏は、「ブラジル・アグロ」が充実したのはボルソナロ政権だが、「農業界がPT政権時代に大きな利益を得た事は疑う余地がない」という。
ポンペイア氏は、農業界がルーラ氏の政権復帰に抵抗感を示している原因は、PT政権が環境政策に基づく監査や検査、農場での労使関係、大規模・中規模のアグリビジネスのエージェントと家族農業と呼ばれるグループの人々との間の資源を巡る紛争などとし、これらの要素が様々な不満を生み出してきたと説明。イデオロギー的な面を見ると、様々なレベルの保守主義も働いているという。
今回選挙で流れていた虚報を通し、左派=共産主義と思いこんでいる人も多い事も改めて明らかになったが、その事もルーラ氏への抵抗感を高めていた可能性がある。
ルーラ氏は決選投票直前の10月27日に「明日のブラジルへの書簡」と題する文書を出し、投資を伴う経済成長、雇用と所得を伴う社会的発展、持続可能な開発と生態学的移行、教育などの13の柱を打ち出した。
その11番目の柱は持続可能な農業で、気候変動(地球温暖化)に対抗するために必要な天然資源保護を前提とした農業生産という考えを前面に出している。そこには、森林伐採を行わずに生産を増やすために生産性が低下した農牧用地を回復させる事や、低金利での農業融資なども含まれている。
アマゾンや先住民居住地も開発し、ブラジルと世界の食糧確保や経済活性化をと説くボルソナロ氏と、気候変動への警告が発せられて世界中が環境政策に力を入れていた時期に森林伐採の大幅減少も成し遂げたPT政権を率いたルーラ氏を比べれば、環境監査強化などが見込まれるルーラ氏より、開発・増産と呼びかけるボルソナロ氏の方が農業界の支持を得やすいだろう。
だが、気候変動が頻繁な干ばつを招き、農業生産にも影響を及ぼしている事などを見れば、今の盛況よりも今後も継続できる農業や持続可能性に目を向ける必要がある事は明らかだ。ルーラ氏当選の報道後、ノルウエーは法定アマゾン保護のためのアマゾン基金への醵金再開に向けた具体的な話し合いのため、年内にもスタッフを送ると発表した。
農業界の好むと好まざるとに関わらず、世界は環境や民主主義の擁護者としてのルーラ氏復帰を喜んでいる。