宝石の街ジアマンチーナ巡り=1=熟練鉱物コレクター斉藤さん

ミナス・ジェライス州の観光地ジアマンチーナ市を初訪問する機会を得た。同市はジアマンチーナという名前の通り、18世紀から「ダイヤモンド」や金鉱を採掘する町として栄え、現在では主に水晶(クリスタル)が採れる町としても知られる。同地に住む日本人・日系人はごくわずかだが、今回、日本から同地に約40年にわたって宝石類を買い付けに来ている日本人鉱物コレクターの紹介と案内を得て、同市と近郊地域を巡った。(松本浩治記者)
ジアマンチーナ市は、サンパウロ市から北東に約850㎞の距離にあり、人口約4万7千人とこじんまりした穏やかな町だ。標高は1200メートルほどで石畳の坂が多く、コロニアル様式の町並みは世界遺産にも登録されている。
18世紀のポルトガルの植民地時代に金やダイヤモンド鉱脈が発見され、アフリカから黒人奴隷を連れてきたポルトガル人が町を建設。奴隷たちに鉱物を採掘させてきた歴史がある。そのためか、町中は白人系に交じって黒人系のブラジル人の姿も多いのが印象的だった。

また、1960年に首都をリオ・デ・ジャネイロからブラジリアに遷都させた当時のジュセリーノ・クビチェック大統領が生まれた町としても知られる。市街にある同氏の生家は観光コースに含まれており、付近には銅像も建てられている。
さらに、同市では2005年頃からミナス・ジェライス連邦大学が創設され、教授陣や学生たちをはじめ、職員等を含めて1万人以上の住人が増加。歴史的なジアマンチーナの町に若者層が急激に溢れたことで、町中にはスーパーマーケットや飲食店等の店舗も増えている一方、近年では特に夜間など一部の地域で治安の悪化も懸念されているという。
3月下旬、サンパウロ市チエテのターミナルから長距離バスに乗車し、13時間かけてジアマンチーナ市に到着。先に現地入りしていた日本人の鉱物コレクターである斉藤猛さん(82歳、東京都出身)が泊まっていた市内のホテルで、同氏と落ち合うことにした。
斉藤さんは1970年代に10年ほどブラジルに住んだ経験があり、当時、日本人の宝石関連業者にダイヤモンドが採れるマット・グロッソ州に連れて行ってもらったことで、鉱物の採掘に興味を持ったという。しかし、その頃のマット・グロッソ州の採掘現場は治安も悪く、別の日系人から紹介された場所がジアマンチーナ市だった。
その後、斉藤さんは日本に拠点を移して生活しながら、80年代半ば頃からは宝石の買い付けのためにブラジルと日本を何度も往復。コロナ禍前は年に2回、ジアマンチーナ市を訪れていた。今回、3年ぶりに同地を訪問した斉藤さんは、旧知の仲であるブラジル人宝石取り扱い業者のフェルナンデス兄弟との再会を喜んだものの、買い付け価格が以前と比べて格段に高騰していたことに愕然としていた。(つづく)