先住民保護区=最高裁の審理再び止まる=下院承認案と先住民の行方は

【既報関連】最高裁判所(STF)は7日、先住民族の土地の境界設定の期限の合法性を扱う法案(PL490/07)の審議を再び差し止めた。この停止は、この日2人目の判事の見直し要請によって起きた。最高裁は90日以内に審議に戻る必要があると7日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)が報じた。
21年8月26日付G1サイトなど(4)(5)(6)(7)によると、PL490に関する最高裁審理は2021年8月に始まり、報告官のエジソン・ファキン判事は、先住民の土地を守ることは憲法が保証しており、憲法解釈を変えての伝統的な土地の所有否定は各部族の生活様式の違いや特性を保つ権利を奪い、部族毎の文化の特性消失と生活基盤喪失という惨状に追い込む上、文化の混合や部族の分散を招くと主張。
「先住民族社会の権利」とは、その存在と尊厳を維持する権利を保証するもの。先住民族の土地は商業的価値でではなく、同一性や精神性、存在性につながるものとして扱うべきとし、保護区制定の基準を憲法公布日とすることは判決の主旨に反すると主張している。
次いで、マルケス・ヌネス判事がRSS保護区の判決で憲法公布日を基準とすることは確認済みとして同法案を擁護したが、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が見直しを求め、審理が中断した。
7日付カルタ・カピタルなど(8)(9)によると、モラエス判事は審理再開にあたり、大量虐殺故に居住地を離れたが、憲法公布後に先祖代々の土地に戻ったところ、彼らの土地だったことを知らぬ人々が生産活動を行っていたという先住民族の例を上げ、憲法公布日を基準とすることは不当とした。ただ、先住民族居住地だったことを知らせなかったのは行政の怠慢とし、撤退を強いられる生産者達への賠償を擁護した。
その後、アンドレ・メンドンサ判事が見直しを求めたため、ローザ・ウエベル長官が自身の退任日(9月末)前の投票再開を指示後に審理を中断。7日Veja誌(10)などによると、農業系議員は喜んだが、最高裁の内外で傍聴していた先住民達は棺を燃やすなどして抗議した。
5月29日付の連邦検察庁サイト(11)や7日付UOLサイト(12)によると同法案は違憲との見解は連邦検察庁やRSS裁判の報告官アイレス・ブリット元判事も表明済みで、ウエベル長官も反対票を投じると見られている。最高裁の審理中断後、上院が同法案をどう扱うかも注目されている。
7日付エスタード紙など(13)(14)(15)によると、下院が承認した内容で同法案が通ると、制定済みの保護区114カ所が無効化される。そうなれば、従来の保護区での鉱物採掘や森林伐採再開は明白で、5500万ヘクタールの原生林が破壊され、温室効果ガス発生量は187億トンに増えるとの研究もある。先住民族の権利を奪って気候変動を促進すれば自分達の首を絞め得る法案の行方は世界中が注目しており、「先住民保護区の行方はブラジルの行方」とされている。