《記者コラム》エルニーニョがより強大に=自ら真綿で首を締める人間

今年のエルニーニョ現象は強大で、農業分野など世界規模で影響が出るという報道が続いている。
エルニーニョ現象は南米ペルー沖など太平洋東側の水温が例年より高い状態が続く現象を指し、西太平洋熱帯域で積乱雲の活動を不活発化させるなどの影響をもたらす。
今年は東大西洋熱帯域の水温が低い状態が続くラニーニャ現象終了直後の8日に始まったため、ラニーニャ現象の影響も残っている。日本でも今後、通常なら気温が低く、日照時間が減る時期になっても高気温が続く見込みだという。
12日付エスタード紙(1)は、今年の世界の最高気温が、強大なエルニーニョ現象と地球温暖化の重なりによって更新されるという専門家の見解を掲載した。
13日付G1サイト(2)は、温室効果ガス発生量増加と強大なエルニーニョ現象で、2027年までは年1・5度以下に抑えるべき気温上昇幅が超過される可能性が66%あると報じている。
エルニーニョ現象の影響は気温上昇だけではない。13日付アグロバンドなど(3)(4)(5)(6)は、ブラジルでは南部の雨量が増える一方、北部や北東部で干ばつのリスクが高まると警告した。
南部での雪や霜の減少予想はある意味で朗報かもしれないが、リンゴの里で雪景色が売り物のサンタカタリーナ州サンジョアキンなどは素直に喜べないだろう。
また、気象環境の変化は、農業生産や地域経済にも影響する。
雨量増加は洪水や土砂崩れなどの水害やそれに伴う経済活動の中断と復旧作業の増加を招く。
干ばつは水の確保を難しくし、農業生産力を弱め、呼吸器系疾患増加などの影響をもたらす。
畑の冠水や日照時間減少、干ばつなどで農産物の収量が減れば食品などが値上がりし、低所得者層を中心とする購買力の低下やそれに伴う工業製品などの売上減も招き得る。
13日付フォーリャ紙(7)はエルニーニョ現象がアマゾンに対して「完璧な嵐」として破壊的影響をもたらし得るとの記事を載せており、懸念の種は尽きない。
こうした影響は世界でも起こる。
何年か前には温室効果ガスの排出量増加を無言で受け止めていた海水が酸性化し、海水温が上昇中との記事も出ている。エルニーニョ現象の強大化は人間の活動の結果だ。
食べ物が変わったりしても体に変化が出てくるまでは時間がかかるが、人間の活動の影響を受けた自然が悲鳴を上げた時は、修復不能か修復が困難な状態に陥っている可能性がある。
気候変動への対応を怠り、思うままの活動を続ければ、動植物の命の存続さえ脅かす事態を招くことを肝に銘じる必要があるのではないだろうか。
持続可能性を忘れた開発や経済活動は真綿で首を締める行為だと心に留めないと、地球や人間社会の未来は更に危うくなっていく。(み)
(4)https://ndmais.com.br/tempo/el-nino-neve-2023-santa-catarina/ 13日
(6)https://grupoahora.net.br/conteudos/2023/06/13/potencia-do-el-nino-divide-opiniao-de-especialistas/ 13日