ベネズエラ、経済危機で国民困窮=インフレ500%にトドメの石油封鎖
【既報関連】ベネズエラは、12カ月間のインフレ率が500%を超え、国民生活を圧迫しているのに加え、トランプ米大統領による厳しい制裁が国家の経済的孤立を深めている。特に、米国が石油タンカー封鎖措置を強化したことは、石油輸出に依存するベネズエラ経済に数十億ドルの損失をもたらす重大な打撃となったと17日付インフォマネーなど(1)(2)(3)が報じた。
ベネズエラの場合、石油輸出が途絶えることは、即座に政府財政に悪影響を与える。石油はベネズエラの主な外貨収入源であり、食料や燃料、医薬品の輸入に大きく関わる。そのため、石油タンカー封鎖措置は、ベネズエラ経済に致命的な影響を及ぼすことが予想される。
ベネズエラ経済は長年の政治的混乱、腐敗、経済管理の失敗で大打撃を受けていたが、米国からの制裁が加わって一層悪化。特に米国が施行した石油封鎖措置は、ベネズエラにとって数十億ドル規模の損失をもたらし、その影響は内需にも波及している。米国制裁は政府の収入源を絶つことを狙ったもので、結果として生活必需品の価格高騰と物資不足を引き起こし、国民にさらに厳しい状況を生んでいる。
インフレ率が500%を超える現在、ベネズエラは過去のハイパーインフレ時代に似た状況に陥っており、国民は物価高騰に苦しんでいる。スーパーでの買い物では大量の現金を使うことが常態化し、これにより、市民の購買力は急激に低下。市場に不足している必需品を確保するために、過剰な支出を強いられる状況が続いている。
ベネズエラ経済は深刻な物資不足と物流の麻痺に直面しており、商業活動を一層困難にしている。民間の多くがドル取引を行うようになった一方で、公務員や年金受給者などは現地通貨ボリバルで給料を受け取っており、ドルを使える層と使えない層の格差が広がっている。
石油市場は一層混乱を深めており、米国の制裁強化により輸出ルートを失いつつある。現在、ベネズエラの石油は主に非公式市場を通じて取引されているが、この市場での取引も制裁の影響で徐々に縮小している。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ベネズエラの石油市場では年間80億ドル規模の取引が行われており、この収入の喪失は政府財政にとり、致命的な損失となる。
ベネズエラの石油業界は老朽化した設備と管理の失敗により、生産能力が数十年前の水準に比べて大幅に低下。現在のベネズエラは世界の石油市場において重要な役割を果たしておらず、供給面での世界市場への影響はほとんどない。だが、米国の制裁によって引き起こされる地政学的リスクの高まりは、保険料の増加やリスクプレミアムの上昇を招き、取引の不確実性を増大させている。
米海軍のプレゼンスが強まる中、ベネズエラの石油輸送ルートに対するリスクが高まっており、これに伴う不確実性が世界の市場に影響を与え始めている。このリスクの高まりにより、船舶や取引企業は慎重な姿勢を強めており、ベネズエラ産の石油取引は減少。
保険料やリスクプレミアムの増加も、国際的な石油取引において重大な影響を及ぼしており、これが国際市場全体に波及する可能性がある。
ベネズエラ政府は米国による制裁に対して強硬姿勢を示し、米国の行動を「海賊行為」だと非難。マドゥロ大統領は17日、国連のグテレス事務総長と電話会談を行い、米国制裁を国際的な不正行為として訴える意向を表明。同会談ではベネズエラの主権が侵害されているとして、国際社会に対して制裁解除を求める姿勢を強調した。マドゥロ氏は、ベネズエラは今後も国際社会と協力し、米国制裁に立ち向かっていくと発言したと報じられている。(4)
ベネズエラ海軍は、石油タンカーの護衛を計画していると発表したが、米海軍に対抗できる力を持たないため、この声明が単なる強硬な言葉に過ぎない可能性も高い。仮に、ベネズエラが実際に石油タンカーを護衛する行動に出る場合、それは国際的な軍事的対立を招くリスクを高めることになると指摘されている。
一方、ブラジルやドイツなどは、ベネズエラに対する制裁強化が地域の不安定化を招くことを懸念している。ベネズエラの経済問題が国内問題にとどまらず、難民大量流出など、周辺諸国にも影響を与えることが懸念されている。
ベネズエラは長年の政治的混乱と経済的困難のため、多くの市民が困窮し、生活はますます厳しくなっている。ハイパーインフレと物資不足の状況は今後も続くと予測され、国民は日々、非公式な取引や過剰な現金支払いに頼りながら生活を維持している。このような経済的な悪循環が続く限り、ベネズエラは更なる経済的縮小と社会不安に直面する可能性が高い。








