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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=19

2023年6月27日

 これは移住して初めて知ったことで、移民を奨励した海外協会の宣伝文句にはない。日本移民は、
過密人口のはけ口として体よく棄てられたんだ。移民は棄民なり、と謂われる所以である。そんな不満を内にくすぶらせていたものである。
「ヴァモス、ヴァモス(さあ、行きましょう)」
 矮小のロバに跨り、西部劇映画まがいの帽子をかぶった赤ら顔の男が、律子たちの横を通り過ぎた。肩から斜めに角ラッパをかけ、腰にはピストルと弾帯、左手に手綱、右手には鞭を握っている。労働者を指揮する監督のルーベンスだ。
「えらそうな恰好ね。まるで英雄気どりたい」
「あのピストルぶっ放すことがあるのだ...

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