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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=33

2023年7月25日

 監督は、男たちに合図した。彼らは手際よく家財道具をトラックに積み込んだ。移民の所帯道具はそれほど多くないので、荷積みはたちまち終った。男手の多い八代一家ではあったが、ピストルを腰にして行動している彼らに手向かうことはできなかった。最後に家族全員荷台に乗るように命じた。泣き、抵抗するつたえや房江を、屈強な男たちがトラックに乗せてしまった。追放の話が伝えられ、田倉親子が現場に駆けつけたとき、トラックは土煙を巻き上げて彼方に消えて行った。
「あの人ら、どこへ追いやられんだろう」
 律子は、視野から消えたトラックの残した土埃を見つめて涙ぐんだ。
「耕地外へ追放するだ...
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