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《記者コラム》PTが「自業自得」のボウロス推し

2023年8月11日

ボウロス氏(Camara dos Deputados)
ボウロス氏(Camara dos Deputados)

 5日、労働者党(PT)が来年のサンパウロ市市長選でのギリェルメ・ボウロス下議(社会主義自由党・PSOL)の支持を決めた。PTがサンパウロ市市長選に自党から候補を擁立しなかったのは結党以来、初めてのこととなる。
 ボウロス氏に関してPTは昨年、現財相のフェルナンド・ハダジ氏を同年のサンパウロ州知事選に出馬させるために、同じく同州知事選出馬を志向していたボウロス氏を説得して出馬を断念させ、代わりにサンパウロ市市長選でボウロス氏を支持することで話をつけた。
 国内左派政党としての強いプライドを持つPTがこの取り決めにあっさりと従うか注目されたが、約束は守られた。ボウロス氏支持の宣言の前には、PTサンパウロ市支部の一部で強い抵抗もあったが、振り切る形となったようだ。
 この話を聞いてコラム子は「ついにPTも弱点を認めたか」と思った。それは同党の「ネット戦略の弱さ」だ。
 ここ10年ほどの傾向として、サンパウロ市におけるPSOLの影響力の強化は如実だ。これはひとえにネット戦略の賜物と言える。ボウロス氏はネット上のインフルエンサーとして有名だが、同氏がインスタグラムに抱えるフォロワーは220万人だ。
 PSOLのサンパウロ州下議では、トランスジェンダー議員として知られるエリカ・ヒルトン氏が110万人、保守系男性議員との激しい議論で有名なサミア・ボンフィン氏が78万人、元サンパウロ市市長で88歳の最長老下議のルイーザ・エルンジーナ氏が45万人とかなりのフォロワー数を誇っている。
 それに対してPTの下議では、大統領府での広報役のアレッシャンドレ・パジーリャ氏の21万人が最高で大半は10万人にも満たない状態だ。
 ここまでの差が生まれているのは、PSOLが「次世代の左派」の取り込みのうまさにある。彼らは女性やLGBTの問題など、若者が興味を抱きそうなことに敏感で、学生が抗議活動を行う現場に必ず姿を現す。
 こうした行動の結果、サンパウロ市のパウリスタ大通りも、「上品な大人の文化街」のイメージから「主張する若者の街」に変わった。昨年の大統領選ではサンパウロ市でルーラ氏の支持がボルソナロ氏を上回ったが、それはPSOLの支持層の影響があるだろうとコラム子は見ている。
 一方でPTは、従来通りの労組に頼った支持者作りの域から出切らず、PSOLが得意な領域に踏み込むのが少し鈍い印象が否めない。
 そのことは2020年のサンパウロ市市長選でボウロス氏が次点、PT候補だったジウマール・タット氏が6位と惨敗した時点で明らかだったが、PTは差を埋められなかったようだ。(陽)


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