《記者コラム》ハッカー対モロ、再び

17日に行われた1月8日三権中枢施設襲撃事件に関する両院議会調査委員会(CPMI)。召喚を受けたハッカーのバルテル・デルガッチ氏が「ボルソナロ前大統領の陣営から選挙システムのハッキングを依頼された」「アレッシャンドレ・デ・モラエス選挙高裁長官の盗聴に成功したら、たとえ逮捕されても恩赦を出して釈放すると言われた」との爆弾発言を行い、物議を醸したが、これとは別にもう一つ大きな見せ場があった。
それはセルジオ・モロ上議がデルガッチ氏に質問した時だった。モロ上議はデルガッチ氏に「あなたは170人に対してハッキングを行ったと聞いているが」と質問すると、デルガッチ氏は悪びれず「いや、もっとだ」と答え、さらに「ハッキング対象の中にはあなたも入っている。あなたの会話を聞かせてもらったが、あなたはとんでもない犯罪常習犯だ」とやり返した。
デルガッチ氏は2019年6月に行われた「ヴァザ・ジャット報道」の中心人物。政治汚職捜査「ラヴァ・ジャット(LJ)作戦」の捜査班や担当判事だったモロ氏の携帯電話の盗聴内容をサイト「インターセプト」で暴露し、デルガッチ氏は一躍有名となった。
ヴァザ・ジャット報道を契機に、モロ氏とLJ班の癒着、検察がゼネコン企業家たちに、被告の政治家が不利になる証言を行うまで意図的な誘導をしていた疑惑などが噴出した。
これが元となり、LJ捜査で収賄容疑によって1年半の実刑判決に服していたルーラ氏を始めとする政治家の被告が続々と釈放された。さらにモロ氏と蜜月のパートナーと目された元検察主任で政治家に転身したデルタン・ダラグノル氏が下議を罷免されるなどの影響が出た。
この時のハッキング内容は現在、連邦警察が捜査を管轄し、時折続報が出ている。今年に入ってからも「LJ捜査班は米国の法務省やFBI関係者と裏で繋がっていた」「検察上層部が収賄行為を行っていた」などの疑惑が出続けている。
デルガッチ氏は今週、ヴァザ・ジャット時のハッキング行為に対し、20年の実刑判決を受けた。
同判決に対してモロ氏は、先のCPMIで言われた「犯罪常習犯」という言葉を引用してデルガッチ氏を皮肉る発言を行った。
モロ氏の発言に対してネット上では「自分は2016年にジウマ大統領とルーラ氏を盗聴し、ヴァザ・ジャットでも囚人を盗聴した疑惑がでているのに」とモロ氏をさらに皮肉る声が挙がっている。
モロ氏は今後、選挙裁判所で上議当選の有効性をめぐる裁判を控えており、その動向に注目が集まっている。(陽)