《記者コラム》「ネイマールの円熟」に期待

サッカーW杯南米予選が始まった。ブラジル代表(セレソン)は22年W杯終了以降、勝利がなく、先行きが心配されたが、今予選をボリビア、ペルー相手に2連勝し、無事乗り切った。
勝因となったのは、なんと言ってもネイマールだろう。年齢が30代に突入し、次回W杯に代表出場するか不透明だったが、この2試合を見る限り、彼には「新たに与えられたポジション」で活躍してもらうことが、彼にとって、そしてセレソンにとっても良さそうな気がした。
「新しいポジション」とはズバリ「トップ下」だ。ネイマールといえば一般的には「左ウイングのスペシャリスト」というイメージが強い。だが、このポジションにはスピードが求められる。セレソンの同ポジションには、ネイマールより8歳下のヴィニシウス・ジュニオルがいる。ネイマールはこれから年齢も上がってくるわけで、体力的にはヴィニシウスに分がある。
しかし、セレソンのエースを10年以上務めたネイマールには誰にも負けない試合勘がある。トップ下という左ウイングよりも動きの少ないポジションであれば、これまで以上にゲームメイカー的な役割を任せられる。年齢的にも相応だろう。ちょうど今のセレソン選手層は攻撃型ミッドフィルダーが薄く、ネイマールを同ポジションで起用できればベストな配役となる。
ネイマールは予選2試合の中で、ウイングを務めたロドリゴ、ラフィーニャと2列目で連携し、さらに中盤のブルーノ・ギマリャンエス、カゼミロとも連携し、ピッチ上で「二つのトリオ」の軸となっていた。
二つのトリオが安定していたからこそ、予選2試合のセレソンは攻守に安定感が生まれた。前回W杯終了以降の結果が出なかった3試合にはなかったものだ。
今回の2試合はヴィニシウスを故障で、アントニーを私生活の不祥事で欠くなど苦しい態勢でのものとなった。しかし、普段は右サイドを守るロドリゴが左サイドでもうまく機能すること、代理召集されたラフィーニャが期待以上の働きをすることなどがわかり、勝利以外にも多くの収穫を得ることが出来た。
ヴィニシウスが復帰すれば彼が左サイドに、ロドリゴが右サイドに戻る。アントニー復帰の見込みが立たない中、ラフィーニャが通用することがわかったのも、今後のセレソンにとっては大きい。懸案だったサイドバックも、この2試合でダニーロとレナン・ロディでとりあえずの目途が立った。センターバックのミリトンの故障による長期離脱は痛いが、層が厚いポジションなのでそこまで不安はないだろう。
あとは今年に入ってから絶不調のセンターフォワード、リシャルリソンの復活を待つだけだ。だがもし、彼の調子が戻らない場合は、来年バルセロナ加入予定の話題の18歳、ヴィットル・ロッケを大抜擢するという手も大いにありだ。(陽)