《記者コラム》特権意識抜けず追い込まれるモロ

セルジオ・モロ氏が遂に捜査の対象となった。モロ氏はラヴァ・ジャット(LJ)作戦の判事時代に、汚職疑惑企業との報奨付証言(デラソン・プレミアーダ)の条件締結を行った。全国法務審議会(CNJ)は、その際に決定された、罪の軽減範囲と、汚職企業への罰金となる石油公社ペトロブラスへの合計21億レアルの支払いに関して、その金額の不当性を追及している。
これに対してモロ氏は「被害にあった企業に金を払うことが罪になるのはルーラ政権だけだ」と反論したが、その的外れな内容にコラム子は拍子抜けしてしまった。CNJが問題にしたのはペトロブラスに金を払うことではない。その額が21億レという、法外な額だったことが問題なのだ。「法律が定める範囲を超えたこと」が問題とされているのに、そこに対しての返答は一切していない。
2019年のヴァザ・ジャット(VJ)報道以降、モロ氏はこのような態度の連続だ。LJ判事時代に「ブラジル政治の汚職に立ち向かう正義の英雄」ともてはやされた同氏は、VJ報道では判事の立場でありながら、検察のリーダーのように振舞っていたことが暴露された。本人は「ハッカーの情報が信用できるのか」の一点張りだが、これが要因となって自身が実刑を下したルーラ氏は釈放。大統領に返り咲いたほか、ほかの容疑者も次々と釈放されている。
その後、ボルソナロ政権で法相に就任するも辞任し、米国の法律事務所に就職。その事務所がLJでモロ氏が有罪にした企業の財政再建を行っていることが判明し、物議をかもした。
モロ氏は自身の潔白性を証明しようと、給与額を公表したが、その収入は世間からすればかなりの高額であり、悪びれずにとった行動によって世間との感覚のズレが露呈した。
2021年には小政党ポデモスから大統領選出馬の準備を進めたが、22年4月、政党移籍期限日に大型政党ウニオンに電撃移籍を発表して波紋を呼んだ。しかし、そこまでしたにも関わらず、大統領選出馬に強く反対され、結局は上院議員選挙に出馬。
上院議員選挙では、ポデモス時代の恩師に勝ってパラナ州の上議に選ばれるも、規定を大幅に超過する資金を使った疑いが持たれ、選挙裁判所に訴えられている。これは最悪、罷免もあり得るもので、窮地に立たされている状況である。
モロ氏本人は依然として「汚職に立ち向かう政治家」のような振る舞いをしているが、彼の行動からは司法出身者らしいルール遵守へのこだわりが感じられない。これまでのことに関してきちんと対応できないようだと、今後の追及の包囲網を逃れるのは厳しい気がする。(陽)