小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=73
「教育者みたいなことを言うじゃないか。俺たちは同じ立場にいる仲間だろう。その君がどういう権利をもって……」
「権利なんかじゃない。説明をしているのだ。いいか山路。日本は今、世界を相手に戦っている。我々はそれに参加できぬ悔しさを味わっている。しかし、それを表面に出しちゃまずいのだ」
「奴らが、俺たちの土地を横取りしようとかかったのは、ドイツが連合軍に降参した翌日のことだった。英米側に附いていたブラジルにとっては戦勝の休日だった。休日の兵を動かしてこの植民地に押しかけたんだ。敵性国民の土地だから脅して作物の歩合を強要して来たんだ」
「その通りだ。だが、先決問題とし...
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