《記者コラム》違いは豊かさを生む鍵=差別の理由とするなかれ

20日が黒人の意識高揚の日だったこともあり、11月の国内メディアでは、人種差別や人種格差にまつわる記事、それらと闘う人々の話などが他の月よりも多かった。
だが、差別や格差を生むのは人種の差だけではない。男女の性別における給与や雇用条件の格差は、昔から言われながら今にも残る問題だし、ブラジルのように国土が広いと地域格差も大きく、経済力のある地域だけで国を造れなどという極論も出てくる。
一方で、人種や性、経済力、住む地域や気候、経歴などによる差は豊かさをもたらす要因でもある。皆が同じ顔や力、経歴なら争いや差別は起きないだろうが、変化や豊かさも生まれないし、創意工夫や競争心による前進や発展も稀だろう。
7月恒例のサンパウロ市の県連日本祭りでは都道府県毎に店を出す食のコーナーが人気を博すし、郷土料理を出すレストランは人気店が多い。郷土料理は気候やその地域に住む人達の文化や人口構成などを反映したものだ。
週に1度のフェイジョアーダの日を狙う常連客などは黒人奴隷が生んだ食の変化を楽しんでいる一例だし、バイア州の太鼓集団オロドゥンやサンバ、フォホーなども文化面での豊かさの一例だ。
日本には「女性は天の半分を支える」という表現があり、昔から女性が果たす役割の大きさや重要さを認めている。ただ、役割や重要さを認めることが平等に繋がらないことは日本の閣僚や議員に占める女性の比率の低さからも窺われる。
閣僚や議員、会社役員に占める女性の比率の低さはブラジルも同じで、パンデミック後に増えた女性殺人や女性への暴行事件は、性差で生じる考え方や行動様式の差やエゴが表出した悲しい出来事だ。
28日付官報に掲載され、28日付G1サイトなどが報じた、女性が診察その他の医療サービスを受ける時は成人同伴を認める法令は、出産時に起きた麻酔医による強姦事件や産科医による強姦事件などの犯罪予防策で、同伴者がいない患者に麻酔を施す時などは医療機関が現場に同伴する人を指名する責任を負うことになる。
解放奴隷や逃亡奴隷からなり、アフリカの文化なども保持している居住地「キロンボ」の住民キロンボラや先住民などに見られる経済力や学歴の差を埋める策の一つは、大学入試や入社試験などの特別枠「コッタ」だ。特別枠の対象には低所得家庭の子弟も含まれ、教育や就職面での障壁は低くなっている。
キロンボラや先住民が先祖伝来の方法で自然保護に寄与していることは専門家も認めているし、彼らの持つ文化の重要性やブラジル文化への影響の大きさは言うまでもない。人々の暮らしや文化を豊かにしてくれているものを差別したり馬鹿にしたりすることは、国の歴史や文化のルーツを無視した行為と言えるだろう。(み)