《記者コラム》ブラジル人2世の汚れたアメリカン・ドリーム

ブラジル人2世の米国連邦議員、ジョージ・サントス氏が先週末、米下院から追放された。同氏は今年正式に米下院議員になったが、その前から数多くの疑惑がささやかれていた。そしてついに1年足らずで、米国連邦議会で20年以上起こっていなかった除名処分の憂き目にあってしまった。
コラム子はこの話を聞いて「なんとも今のブラジル人らしいエピソードだな」とつくづく感じた。ブラジルがGDP世界10傑入りをしているとはいえ、GDPで常にトップの米国はブラジル人にとって永遠の憧れの国。そんな米国で成功するのはブラジル人の永遠の夢だ。
フロリダ州オーランドなどには大きな伯人コミュニティがあるが、そこにはアメリカン・ドリーム追求型の人が多くいる印象を受ける。
そうした中でサントス氏は「ニューヨーク選出の連邦議員」という、伯人だけでなく米国人でさえ羨む高嶺の花の職業を手に入れた。選出が決まった瞬間は天にも昇る気分だったことは想像に難くない。
サントス氏の上昇志向は選挙キャンペーンの時から濃厚に表れていた。
サントス氏は、伯人のみならず米国に憧れを抱く南米人に極めてよくありがちな反共保守、とりわけボルソナロ前大統領の支持者であることを強くアピールしながらも、性的な嗜好に関してだけは南米左派に多い同性愛者であることを主張した。
この主張はかなりのインパクトを伴って米国社会に迎えられ、サントス氏は、米国の保守代表、共和党の歴史において初めての同性愛者として、しかも南米にルーツのある移民の代表者として、同国のメディアで大いに話題になり、当選を果たした。
だが、サントス氏の描いたこの「うまい策略」は、ほころびやすいもので、当選後、すぐにその矛盾を指摘され始めた。
サントス氏は先祖の出自や自身の学歴、職歴を詐称。運営する動物愛護団体は架空組織で、経歴にある会社運営経歴も矛盾点ばかり。同性愛者を主張しておきながら女性との結婚経験があり、とどめは選挙資金の不正運用。これだけのことが重なり、掴んだはずのアメリカン・ドリームは一転して、「米国政界の歴史上に残る恥」に転落してしまった。
今回は喜ばしい話ではなくなってしまったが、伯国人には今回の件を他山の石として、来るべき未来にもっと理想的なアメリカン・ドリームを掴んで欲しいものだ。(陽)