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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=75

2023年12月16日

 浩二は、ニュースの受信源である短波放送を、一度、自分の耳で確かめたいと望んでいた。ある日の出荷トラックに便乗して町へでかけた。ニュースの受信時間は夜の九時と言うから、その日は町で一泊となる。帰りの便は翌日の夕方までない。大勢の棉摘み人夫を雇っている農繁期に、二日の休暇は贅沢すぎたが、浩二は最近の戦況ニュースにはじっとしていられぬ苛立ちがあったのだ。
 その仲買商は津野という小柄な精悍そうな男で、棉の目方をごまかすと言われていたが、ニュースを聴くために農家の多くは彼の店に生産物を卸していた。古い作りの住宅で、骨董家具類の並んでいる薄暗い居間に五〇センチ大の箱型のラ...

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