小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=77
万世一系の天皇を崇め、かつて異国の征服を見ぬ民族と教えられてきた矜恃が地に落ちた。晴天の霹靂とはこのことか。肉親を亡くした悲しみにもました深刻さが去来して、何をなすべきか、すべては空白で、己を見失っていた。地球がその辺から真っ二つに割れて、宇宙に舞い散ればいいと浩二は思った。まるでミレーの《晩鐘》の景色のように、人びとは黙して語らず、あたりの草木さえ微動だにしなかった。沈痛に、沈鬱に……
祟高で静寂な一刻が、この場を支配した。赤い太陽が沈み、暮色が漂いはじめていた。
「こうしていても仕方がない。植民地の全員に呼びかけて、戦没者の慰霊法要でも執り行ったらどうだ...
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