小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=83
一週間が十日となり、一カ月過ぎても船影は見えなかった。家族を抱えての宿屋住まいには負担が大きい。南洋開拓への資金が宿泊代に消えてはならぬ。さては詐欺にやられたかと内心不安であった。持ち金の大半を遣い込んだ家族は、ひとまず田舎へ引き揚げたうえで、迎え船の到着を待つことにした。某氏の土地は売却済みであったが、先方は理解して、借地として受け入れてくれた。元の家に住みつくこともできた。無駄金は遣い込んだが農業に経験のある彼らは、家の再興をあまり苦にすることもなかった。ただ艦船の来航には神経を尖らせていた。船の入港のニュースが入るたびに息子をリオ・デ・ジャネイロまで出向かせ...
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