小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=101
母は時どきそんなことを言った。親戚の者は、表面的には、非常に心配してくれたが、心底からの愛情を注いでくれる者はいなかった。母は時どき輸血が必要となり、父は方々の親戚にあたってみるのだが、その都度、誰もが決まって口実を作り、進んで献血する者はいなかった。結局、痩身の父自身から血液を採り、まだ不足の分は日雇い人夫から買っていた。
マイトマイシンが癌の特効薬だと勧められると、父は早速それも日本に注文した。マイトマイシンは制癌剤として発売されており、特効薬でないことを父は知っていた。日本に特効薬があるのに世界の学会が黙って癌患者を見殺しにしている筈がない。世界の医学界...
有料会員限定コンテンツ
この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。
認証情報を確認中...
有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。
PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。