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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=101

2024年3月6日

 母は時どきそんなことを言った。親戚の者は、表面的には、非常に心配してくれたが、心底からの愛情を注いでくれる者はいなかった。母は時どき輸血が必要となり、父は方々の親戚にあたってみるのだが、その都度、誰もが決まって口実を作り、進んで献血する者はいなかった。結局、痩身の父自身から血液を採り、まだ不足の分は日雇い人夫から買っていた。
 マイトマイシンが癌の特効薬だと勧められると、父は早速それも日本に注文した。マイトマイシンは制癌剤として発売されており、特効薬でないことを父は知っていた。日本に特効薬があるのに世界の学会が黙って癌患者を見殺しにしている筈がない。世界の医学界...
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